フリーに働くエンジニア
Vol.14
派遣は新たな分野に挑戦する一手段 朝日伸吾さん(セキュリティ管理)
2004.12.2 Text=中村仁美 Photo=徳田貴久

朝日伸吾さん(セキュリティ管理)
語学専門学校卒業後、ソフトハウスに就職。5年間、通信業や製造業を対象としたソフトウェア開発に携わる。その後、外資系製造業に転職し、IT管理部門に配属。8年間、社内の情報システムスタッフとして、インターネットやサーバーの導入など、IT導入の推進に携わる。2003年11月、リクルートスタッフィングに登録。2004年5月より大手シンクタンクのWebサイトのセキュリティ管理を担当。

 年齢が高くなればなるほど、新しい分野へのチャレンジは難しい。しかしエンジニアであれば、いくつになっても新しいことにチャレンジしたいというと思う人も多いはず。現在、40歳の朝日さんもそんな思いを抱いている一人だった。ではどうすればその思いを叶えられるのか。朝日さんが選んだのは「派遣」という働き方だった。
1986年、語学系の専門学校を卒業した朝日さんが就職したのはソフトハウス。当時、IT業界は日の出の勢いで伸びていた。いわゆるバブル崩壊前のことだ。
「業界として非常に伸びていましたし、求人も豊富でしたから。ソフトハウスに就職し、通信業や製造業向けのシステム開発に携わりました」
しかし、5年間勤めたこの会社は、ITバブル崩壊の余波を受け、リストラを行うまでに追い込まれた。
「IT業界にずっとかかわっていきたい。でも、今度は景気に左右されるソフトウェア企業ではなく、安定感のある会社でITに携わっていこう」と考え、外資系メーカーのIT管理部門に転職した。

●自社のITインフラを企画、導入推進

そこで、朝日さんが担当したのは社内情報システムの保守・運用。96年、インターネットの普及に伴い、朝日さんの会社でも新しいネットワークの企画や導入などに携わることになった。
「そのとき初めてインターネットに触れて、『これはすごい技術だ!』と思いましたね」という朝日さん。「自分が携わっていきたいのはインターネットだ」という思いを抱いた。
「Webサイトは企業をPRするという使い方だけではありません。マーケティングや受発注のツールとしても使えます。もしWebにこのような機能を取り入れることができれば、企業の業務プロセスも変えることができるかもしれない。そんなふうにインターネットを会社のシステムに積極的に取り入れていきたかったんですけど……」
朝日さんはそう考えたものの、会社として新しいアーキテクチャや思想を取り入れることは、なかなか難しい問題だった。
「この会社にいる限り、私の仕事は既存のシステムの保守・運用がメーンとなる。インターネット分野にシフトするためには、転職するしかない」
2003年11月、朝日さんはそう決意。退職し、転職活動を始めた。

●派遣で「自分にあう会社」を探そう

 しかしなかなか、自分が思うような会社に出あわなかった。求人広告を見て「いいな」と思って話を聞きにいくと、思っていたのと違う仕事ということもあった。
「IT業界は広いですし、業種も複雑です。そんな中で、本当に自分にフィットする会社を見つけるのは至難の業ですよね」と朝日さん。長くこの業界で生きてきた朝日さんでも、自分で会社を探すのは難しかったという。しかも今回の転職は、今まで専門に携わっていなかった分野への挑戦だ。39歳、年齢的に若くもない。そこで考えたのが、「派遣」だった。
「正社員は確かに安定性があります。しかし私の年齢で新しい分野に挑戦をしようと思うと、正社員で雇用するという企業は少ないでしょう。そこで今回の転職は、次のステップに進むためのスキルアップ期間と割り切ったんです。派遣エンジニアとして仕事に携わり、その中で自分の方向性を決めようと考えました」
そこで朝日さんは、IT系の案件をたくさん持つリクルートスタッフィングに登録した。
「私がこだわったキーワードは、インターネットとセキュリティ。紹介された中でこの2つのキーワードを持っていたのが、現在の仕事です」
2004年5月、朝日さんは大手シンクタンクでWebサイトのセキュリティ管理に携わることとなる。

●自分の進むべき道がみつかった

「この会社では分社化が進んでおり、会社ごとにHPがあったりするので、50サイトほどのセキュリティ管理を行っています。具体的にいうと、セッションハイジャックや改ざん、盗聴、なりすましなどの脅威を受けていないか、HPを管理するのです。またそのような脅威を受けないよう、セキュリティを保つ手段を提案したり、万一、脅威を受けた場合は、対応措置を施したりという仕事もします」
前職でインターネットの導入などに携わったとはいえ、今回の仕事は未知の分野だ。知識の習得は必須となる。
「現在の職場環境にはセキュリティに関してプロフェッショナルな方もいて、最新の情報が常に手に入れられる。エンジニアにとっては非常にいい環境です。もちろん、それ以外にも技術系のWebサイトを見たり、技術書を読んだりと、スキルアップへの努力は欠かせません」
朝日さんは派遣という働き方について、「自分の可能性を探ったり、自分にあう会社を探したり、思い切った挑戦をしたりする場合に、いい選択だと思います」と語る。
「私自身、派遣という働き方を選んだからこそ、今の仕事に出あい、自分の目指す方向が見えてきたのですから」