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【イベントレポート】RPAの基本から導入の実務まで~RPA未経験者でもOK~

この記事では、2019年7月26日に開催したイベント「RPAの基本から導入の実務まで~RPA未経験者でもOK~」をレポートします。解説書『絵で見てわかるRPAの仕組み』の著者である西村泰洋さんに、RPAの基礎、そして導入するにあたっての注意点を教えていただきました。

■今回のイベントのポイント
・日本市場におけるRPAの導入は2015年から
・RPAとは「自分以外のソフトウェアを対象に、定義された処理を実行するプログラム」
・導入に成功している企業には必ず「しくみ」がある

【講師プロフィール】
西村 泰洋さん
富士通株式会社 フィールド・イノベーション本部 金融FI統括部長。デジタル技術を中心にさまざまなシステムと関連するビジネスに携わる。著書に『絵で見てわかるRPAの仕組み』『図解まるわかり サーバーのしくみ』『RFID+ICタグ システム導入・構築 標準講座』(以上、翔泳社)『図解入門 最新 RPAがよ~くわかる本』『デジタル化の教科書』(以上、秀和システム)『成功する企業提携』(NTT出版)がある。

RPA導入の歴史

最近、RPAという言葉をよく耳にします。業務の効率化を推進する技術だということは知っているけれども、詳しくはわからないという方も多いのではないでしょうか。

そこで西村さんは初めに、RPAという分野が一体いつ頃に登場したのかを解説してくださいました。

まず大手企業が2015年ぐらいから部門での導入やPoC(概念実証)を開始し、2016年度あたりから銀行や金融、製造業などで全社的な導入に着手し始めたそうです。準大手企業は少し遅れて、2016年度あたりから部門での導入やPoCが始まり、2017年度には全社導入を検討する企業が増え始めたとのこと。自治体や公共機関は、さらにその後を追う形で、2017年度に研究や予算確保をスタートし、2018年度あたりから導入が始まったそうです。

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▲日本市場におけるRPA導入の歴史

西村さんは「システム開発時のテスト業務に自動化ツールを使っていたので、RPA自体には驚きませんでしたが、一般の業務に使うということにはビックリしました」と、ここ数年での活性化には驚いたそうです。

RPAはどんなソフトウェア?

そもそも、RPA(Robotic Process Automation)とは、どのようなソフトウェアを指すのでしょうか。

西村さんによれば「自分以外のソフトウェアを対象に、定義された処理を実行するプログラム」のことを指すそうです。この「自分以外のソフトウェアを対象に」というところが重要であると説明されました。

これはどういうことかというと、Wordは自ら文書を正すことができ、業務アプリケーションは自らデータの登録や処理をすることができますが、RPAは“自分に対してできることがない”ということです。

また、「自分以外のソフトウェア」は1つでも複数でも問題はないので、複数のシステムソフトウェアの操作を並行してできるベテラン社員のような作業も、RPAにはできてしまうそうです。

処理の定義は、開発者(RPAソフトウェアのユーザー)が行うので、開発者は、実際の業務を熟知しておく必要があるそうです。

これらの説明をされたあとに、RPAソフトの構成や種類についての紹介がありました。ここでは、RPAソフトの種類について興味深かったことをご紹介します。

AccessやSQL Server、Oracleなど、データベースを規模や用途によって使い分けているように、RPAツールも目的や規模に応じて使い分けるそうです。「3種類ぐらいを組み合わせて使っている」のが一般的だと西村さんはお話しされました。

製品として、国産のWinActorやBizRobo!、UiPathが人気だそうです。

・WinActor、WinDirector
・BizRobo!
・UiPath
・Automation Anywhere
・Blue Prism
・Kofax Kapow
・NICE
・Pega

上記はいずれも商用製品ですが、フリーで使えるRPAソフトも今は流通しているとのことでした。

また、RPAソフトの認定資格というものもすでにあり、なかには無償で取得できるものがあるそうなので、勉強するからには…と考えている方は、挑戦してみてはいかがでしょうか。

ロボット開発の手順

RPAの定義、つまりロボットの開発は難しいのでしょうか。その点も西村さんが実演を交えながら解説してくださいました。

まず「プログラミングスキルは必要か?」という疑問に対しては、「経験は必要ない。ただし、構造化という発想が必要」とのこと。業務のルールを見出し定義していく過程で、繰り返しや条件分岐のようなものは使うそうです。

RPAソフトの種類によって、ロボット開発の方法が変わります。現在、RPAソフトは次の3つの種類に分けられるそうです。

・画面キャプチャタイプ
・オブジェクトタイプ
・プログラミングタイプ

また、1つのRPAソフトが1つのタイプしか持たないわけではなく、多くの製品が複数のタイプを持っているとのことでした。

「先輩から教わると、その先輩の好きなロボット開発のタイプが選ばれてしまいますが、たいてい、同じソフト内にはもう1つのタイプも用意されているということを覚えておくといい」と西村さんはお話しされました。

次に、国内で人気のWinActorや、海外でも使われるKofax Kapow、Pega、Blue Prismという4製品についての具体的なロボット開発も紹介してくださいましたが、ここでは割愛します。

プログラミングと同様で、設計→開発→単体テストという手順は、RPAでも変わらないので、プログラマがRPAのロボット開発へ移行するのは、それほど難しくなさそうです。

ただし、PC操作の可視化という重要な作業が発生します。ここがRPAのロボット開発で難しい部分かもしれません。

PC操作の可視化

オフィスにおける日常業務は、手順に関する資料が存在しないことが多く、先輩社員から後輩社員に口頭で伝えられ、属人化しているケースも少なくありません。RPAのロボットプログラミングをするに当たり、まずはこの業務を可視化する必要があります。

可視化の手法としては、インタビュー、調査票、調査員による観察などが挙げられます。きちんと手順を書き起こすと長大なリストになってしまうので、RPAを使いたいところにマークを入れて、そこを中心に見ておくことがポイントだそうです。また、使いたいところのPC操作の可視化には、Windowsに搭載されているステップ記録ツール(PSR)を使います。

また、機能要件と非機能要件、システム全体の性能、セキュリティなど、現場の個人が要求しない部分についても、きちんと検討しておく必要があり、ワークシートによる作業手順の整理や、フローチャートによる確認なども必要です。

導入に際しての注意点

西村さんによれば、RPAの導入に失敗している企業と成功している企業があり、「成功している企業には必ずしくみがある」のだそうです。

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▲部門がしっかり分かれており、それぞれの業務の範囲も明確に分けられている

それは利用部門、管理部門、IT部門などの体制が整備されていること。それにより導入の際の、エンジニアの作業や担当窓口なども明確になります。

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▲開発・導入に当たって、どの部署がどの部分の担当なのかが明確になり、作業もスムーズに行える

現在は、RPAのロボット開発をプログラマが担当することも多いのですが、今後は事務スタッフの活躍領域になってくることが予測されます。ExcelやWordが使えるレベルから、次第にマクロが使えるレベルが求められるようになったのと同様に、今後は「RPAの定義が行える」というスキルが求められるかもしれません。

「RPAについては自信がない」という方も、まずはフリーのソフトを使い、どのようなものであるかを試してみてはいかがでしょうか。株式会社リクルートスタッフィングが運営するITSTAFFINGでは、弊社に派遣登録いただいている皆さまのスキル向上を支援するこのようなイベントを、定期的に開催しています。皆さまのご参加をお待ちしております。