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【インタビュー】元バーテンダーが心がけたのは、いくつかのスキルを併せ持った“スキルプラス”によるキャリア形成

エンジニアとしてのキャリアを考える上で、スキルアップに不安を持つ方は多いのではないでしょうか。株式会社リクルートスタッフィングが運営するITSTAFFINGでは、スキルアップのために努力されている登録スタッフにインタビューをし、普段のお仕事で気を付けていることや、スキルアップのための取り組み方について、定期的にご紹介します。

今回お話をうかがった田中敦士さんは、もともとバーテンダーをしており、友人とコンセプトバーを経営していたそうです。そのまったくの異業種から、ITの世界に飛び込みました。その後、会社の設立や登録派遣などを経て、現在はフリーランスとして活躍中。これらのご経験を経て、心がけていることはなにかを教えていただきました。

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バーテンダーからインフラエンジニアへ。勘違いが生んだ華麗なる転身

「日本バーテンダー協会にも所属するバーテンダーを6年ほど務めており、友人と一緒に、当時としてはまだ珍しかったコンセプトバーを立ち上げました。スキューバダイビングやサーフィンが好きだったので、コンセプトは『海』。深海をイメージした内装に、BGMは波の音、床には砂を撒いて、雰囲気を出していました」

しかし「一生、飲食をやっていくのは難しい」と考えた田中さんは、バーテンダーの道から離れることを決意した。1995年9月頃だという。

田中さんが転職先として選んだのは、大手通信機器系メーカーのグループ会社で、ちょうど契約社員を募集していた。ITの知識を持ち合わせていなかった田中さんがなぜ?と思うかもしれないが、実は転職先の会社が「〇〇システム建設」という社名だったことから「建設現場の仕事だろう」と勝手に思い込んでいたという。

「配属先に、軍手と作業服を持っていったら、仕事は入力オペレーターというもので、協力会社からヒアリングしてデータを入力し、ファイリングをしていくという業務でした(笑)」

驚くことに田中さんは、このとき初めて本格的にPCに触れたそうだ。しかし、そこから急激な勢いでPCに関する知識やスキルを習得していく。

覚えたExcelやAccessを活用し、顧客に業務改善を提案、推進していくようになる。いつしか田中さんは、顧客はもちろんのこと、勤務先の会社にとっても、無くてはならない存在へと成長していった。もちろん収入も、どんどん増えていったという。

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会社を立ち上げ、仕事が順調に進んでいく

そのような中、会社から田中さんに、正社員化の打診があった。しかし田中さんは断った。

「業務委託契約を結ぶ契約社員ということもあり、当時の月収は90万円ほど。それが正社員になると5分の1ぐらいになってしまうのが嫌だったんです」

対個人での業務委託契約では上限があったのだろうか、田中さんの事情を理解した同社役員から今度は「田中さん、自分で会社を作れば?」と提案された。そうすれば対法人で業務委託契約ができるという。

結果、田中さんは会社を立ち上げ同社の仕事を続けていった。その後も、大手シンクタンク、コンビニチェーンなどに向けたさまざまな仕事を手掛ける。

「ある自動車メーカーの東京本社におけるシステム構築プロジェクトの仕事を受けました。そこでは、システム管理の責任者を任され、ヘルプデスクの設置や、Notes Dominoを使ったイントラネット環境を構築するなど、さまざまな仕事を手掛けました。3000万円近い予算を承認無しで動かせるのが面白くて仕方ありませんでした」

当時の月収は20代半ばにして150万円に達していたという。と、ここまでならよくあるサクセスストーリーだったかもしれない。しかし、この後、田中さんは大きなアクシデントに見舞われてしまう。

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体調を崩した後の再スタートは、登録派遣から

トントン拍子に、エンジニアとしてのスキルの幅を広げ、収入を上げてきた田中さんだったが、事故に遭い、うつ病を発症してしまった。

「あの時は本当に大変でした。何をするにも気力が湧かず、思考能力が低下し数字も6までしか数えられなくなってしまったんです。結局、医師に従い、仕事を休んで静養するしかありませんでした」

業務を離れ、休養をとることにした田中さんは無職となった。休養後、仕事を復帰するに当たり、田中さんが選んだのは登録派遣だった。派遣先についての希望も、地理的な条件のみ。

そして紹介されたのが、通信事業者の基地局刷新のための進捗管理のプロジェクトだった。

「Excelが使える人を募集していて、当初は一般派遣の平均的な時給でしたが、最終的には派遣先社員の給与(年収)を上回りました」

もちろんExcelで進捗管理を入力するだけで時給を上げていったわけではない。

プロジェクトには設計会社や施工会社など、複数の協力会社が関わるため、進捗の確認やすり合わせも時間がかかり、何とも効率が悪い。そこで田中さんは、関係する会社のスタッフを定期的に呼び寄せ、一部屋に集めてその場で図面の修正などを行わせた。

また、同プロジェクトでは各担当者からのヒアリングを行うために、ITだけでなく、建築、電力、通信、法律などの知識も必要になる。そこで田中さんは、業務の傍ら、それらの分野の基礎知識を1つずつ身につけていったという。これらの努力により、進捗上の問題点がすぐに明らかになるなど進捗管理の効率が上昇し、田中さんは図面チームのリーダーを任されるようになったのだ。

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キャリア形成の極意は、スキルプラス

登録派遣を経て、現在はフリーランスとして、以前も仕事をしていた大手シンクタンクで、業務委託というカタチで働いている。

自身を「雑務のエキスパート」と呼び、毎月100ページ近い顧客への報告書作成や、ネットワークやサーバーのセキュリティー管理業務など、ありとあらゆる仕事をしている。ただし、オーバーワークにならないよう、18:00までには退社するようにしているという。

そんな田中さんに、キャリア形成の極意を聞いてみた。

「私の場合は、人がやりたがらないことを率先してやるように心がけています。若い人は、『スキルアップ』に目が向きがちですが、私はスキルアップではなく、スキルプラスの方が大切だと考えます。あるスキルについてレベルが高い人は自分以外にも大勢います。しかし、いくつかのスキルを併せ持った人となると、その組み合わせ次第ではありますが、かなり限られてきます」

振り返ってみれば、田中さんのキャリアは、何か一つの技術分野を極めていくスペシャリスト型ではない。もともとExcelやAccessの職場での活用と提案からスタートし、現場で発生するさまざまな雑務をこなしながら、異なる分野のスキルを一つひとつ加えていったオーソリティ型と言える。そうして出来上がった稀有な存在に、高い付加価値がついているのだ。

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最後に、スキルプラスのために日々実践している手法を紹介してくれた。

「本は1つのテーマについて最低2冊は読みます。1冊は基礎解説である程度全域を網羅しているもの。もう1冊は図解などで、部分的な理解を深めていくものを選んでいます。自宅で使うPCも遊び用と勉強用を分けており、勉強用のPCでは、次の日の仕事のために、いろいろ試したり、人と話すために調べものをしたりしています。そうすることで気持ちが切り替えられるし、勉強用PCのブラウザの閲覧履歴そのものが自分にプラスされたスキルの記録にもなりますよ」

直面する課題を一つひとつ解決していくために努力を続けることは、一見簡単そうに聞こえるが、成し遂げるのは難しい。しかし、結果がついてくることを知っている田中さんは、今日もスキルプラスのために励んでいるだろう。