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【イベントレポート】サーバーから見るシステムとITの動向~システム開発未経験者でもOK!~

株式会社リクルートスタッフィングが運営するITSTAFFINGでは、弊社に派遣登録いただいている皆さまのスキル向上を支援するイベントを、定期的に開催しています。

2019年5月10日のイベントでは「サーバーから見るシステムとITの動向~システム開発未経験者でもOK!~」と題して、書籍『図解まるわかり サーバーのしくみ』の著者である西村泰洋氏を講師にお迎えし、サーバーの基本から話題のAIやIoT、RPAといったシステムについても、サーバーからの視点で解説していただきました。

※本レポートで使用する図版は、西村さんの著書『図解まるわかり サーバーのしくみ』より抜粋しております。

■今回のイベントのポイント
・企業や団体で稼働しているシステムについて
・サーバーの基本
・話題のAI、IoT、RPAなどのシステムとしての実態

【講師プロフィール】
西村 泰洋さん
富士通株式会社フィールド・イノベーション本部 金融FI統括部長。デジタル技術を中心にさまざまなシステムと関連するビジネスに携わる。著書に『図解まるわかり サーバーのしくみ』『絵で見てわかるRPAの仕組み』『RFID+ICタグ システム導入・構築 標準講座』(以上、翔泳社)『デジタル化の教科書』『図解入門 最新 RPAがよ~くわかる本』(以上、秀和システム)『成功する企業提携』(NTT出版)がある。

企業や団体で稼働しているシステム

今回のイベントは「サーバーのしくみ」と「エンジニアのキャリア」という2つのテーマを巧みに組み合わせた構成でした。今回のレポートでは「サーバーのしくみ」を中心にお伝えします。

今やインターネットサービスで多数のサーバーが使われていますが、台数から言えば、組織や団体内で日々の業務を支えているものが圧倒的な多数を占めています。

そこで、まずは組織内の典型的なサーバー構成を見てみることに。

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▲「進んだ企業」の業務システム例。一部オンプレミスのシステムが残るものの、かなりの部分はクラウド化されている(P221)

最初は「進んでいる企業」(西村さん)のケース。この企業では200を超えるシステムが稼働しており、多くのシステムはクラウドに置かれ、ERPは、まだクラウドに移行されておらず、オンプレミスのサーバー上で運用されています。各部署では部内ファイルサーバーなどが運用されているケースも、実際の現場でよく見受けられます。

一方で、比較的規模の小さな組織では、ほぼオンプレミスで構成されています。

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▲別の企業の業務システム例。オンプレミスのサーバー上でシステムを利用している(P223)

企業によっては、一度作ったシステムをできるだけ長く使おうとする傾向にあり、IT投資の割合が大きくありません。エンジニアから見ると寂しい限りですが、西村さん曰く「意外と、こういう会社のほうが儲かっていたりする」のだそうです。

続いて、これらのサーバーに関する基礎知識について解説してくださいました。

サーバーの基本

まずは企業や団体で使われている業務システムのサーバーについて、基本形から学んでいきます。

業務システムにおいて重要なのはユーザーが入力する「データ」。そのため多くの業務システムは、データベースサーバーとシステム規模が大きくなる場合にはアプリケーションサーバーという2つで構成されています。

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▲業務システムに限らず、インターネット上でさまざまなサービスを提供するサーバーにおいても、データベースとアプリケーションサーバーで構成されることが多くなっている(P103)

この後、サーバーのハードウェアについてや、ファイルサーバー、プリントサーバー、メールサーバー、Webサーバー、DNSサーバー、プロキシサーバーといった各種サーバーについて、そしてインターネットの基本的な仕組みについても解説がありました。

話題のAI、IoT、RPAなどのシステムとしての実態

この中で、クライアントサーバー型のシステム構成に対して、サーバーから命令や指示を出し、配下のコンピュータおよびデバイスに処理をさせる「サーバーからの処理」に興味をひかれました。具体的には、運用監視、RPA(Robotic Process Automation)、IoT(Internet of Things)、BPMS(Business Process Management System)などだそうです。

RPAは、事務処理を自動化するためのソフトウェアで、単体のデスクトップPC上の操作を自動化するものもありますが、サーバーからの処理で複数のデスクトップPC上の操作を統合して、処理を大幅に効率化するものもあるそうです。

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▲RPAでは、サーバーのなかに仮想化された複数のロボットファイルと実行環境を備えて、デスクトップがそれらを取得して実行することで、複数のデスクトップPCの操作を統合し、処理を大幅に効率化するものもある(P139)

西村さんによれば、「近年、BPMSとの連携が増えている」とのこと。BPMはその名の通り業務プロセスの管理なのですが、各種のシステムを連動しながら、業務プロセスを見える化し、PDCAサイクルを用いて、業務プロセスを改善・効率化していくものだそうです。

また「IoTには手を出すな」という話も興味深いお話でした。IoTは、(ハードウェアなどの)素の性能がきちんと分かっていないと、システムの効果を見積もれないという難しさがあるそうです。西村さんの経験談として「東京で実績のあるICタグのシステムを北海道に展開したときに、大雪が原因でタグが読めなくなるという不具合」が実際にあったそうです。システムの開発・構築時に、大雪を想定できるかどうかは、なかなか難しそうです。

不正アクセスやデータ漏洩に対するセキュリティについてもお話がありました。冒頭にお話があったように、業務システムにおいて大切なのはデータです。これを勝手に持ち出されないよう、暗号化通信やファイアウォール、DMZ設置などの外部からの不正アクセス対策に加え、ユーザーグループの設定やアクセス権の制限など、組織内部からの不正アクセス防止も忘れてはなりません。運用レベルでも、きちんと考える必要があるそうです。

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▲不正アクセスは外部だけでなく、内部からもあり得る。アクセス権の設定なども含め、運用レベルでのセキュリティ対策も忘れてはならない(P153)

今回のイベントでは、こうしたサーバーの解説と並行して、エンジニアとしてのキャリア形成や技術スキルの向上などについても、さまざまなアドバイスがありました。ソフトウェア開発エンジニアだから、フロントエンジニアだから、サーバーやネットワークのことは知らなくても良いということはなく、こうした基本的な知識は、しっかりと備えておくべきだと再認識した内容でした。