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【イベントレポート】レゴ®シリアスプレイ®でわかる自分の感情とニーズとは?

株式会社リクルートスタッフィングが運営するITSTAFFINGでは、弊社に派遣登録いただいている皆さまのスキル向上を支援するイベントを、定期的に開催しています。

2018年9月28日開催のイベントでは、レゴ・ブロックを使った「レゴ®シリアスプレイ®」のワークショップを開催。それぞれがグループワークを通して、日頃なかなか見つめることのない「自分のニーズ」を見つけていきます。今回は、この記事を執筆しているライターもワークに参加して、一緒に学びました。

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■今回のイベントのポイント

・頭で考えずに、手の触感を活用してできるだけ直感でワークする
・作品からストーリーを語ることで、無意識下の思いを見つけていく
・不本意な状態にあるとき「相手がこうすべき」より先に自分の「こうしたい」を明らかに


【講 師】納富 順一さん
▲【講 師】納富 順一さん
大学卒業後1年間のニートの後、テレビ局のADを経て、人材業界に。新卒、中途、障がい者など幅広い分野で人材ビジネスを経験。企業、求職者の目線に立ちづらい人材業界のあり方に違和感を持ち、もっと時代にあった本質的なアプローチを追求するためにキャリア解放区の理事長に就任。

レゴ®を使って対話を進める

納富さんは、「新卒一括採用という仕組み」に同調しない就活生を中心として、対話をベースとした採用支援を行っています。その一環として、今回のようにレゴ・ブロックを使った対話のワークショップも進めているそう。スキルだけでなく、生き方や内側に持っているものを見つめていくようにしています。

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▲最初に、レゴ®シリアスプレイ®が生まれた理由を解説

この日に紹介する『レゴ®シリアスプレイ®』は、デンマークのレゴ社が、スイスの国際経営開発研究所、マサチューセッツ工科大学と協力して開発したプログラムで、2001年に完成しました。広く知られるようになったのは、NASAに導入され、チームの関係性がよくなったという実績が出てからのこと。その後、マイクロソフトやフェイスブックなど、アメリカ西海岸の企業を中心に導入が進んでいます。国内でも、企業や教育機関などに広まっています。

レゴ®シリアスプレイ®はできる限り直感的に

レゴ®シリアスプレイ®の起源などが説明された後、いよいよやり方の解説です。これから、レゴ・ブロックで作品を作っていきますが、レゴ・ブロックをまったく触ったことがないという方でも大丈夫です。むしろ、レゴ・ブロックに慣れ、作品を作り慣れている人はワークが難しくなると言います。頭で考えずに、できるだけ直感でくみ上げることが大切。設計図を頭で考えてから作るようなことはしないでほしいとのことでした。

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▲各自に同じパーツが配られており、この中で作品を作っていく

「手にはさまざまな神経が張り巡らされており、外部化された脳とも言われています。手の感覚は脳と連動しているので、思考で考えずに、手の感覚でくみ上げてください。これはとても大事なポイントです」

最初のワークは、配られたパーツを使って「できるだけ高いタワーを作る」が課題。ワークがスタートすると、それぞれが思い思いに作り始めました。途中まで作ったのに崩れてしまい「あっ」という声が漏れる人も。

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▲配られたパーツをすべて使い、できるだけ高く積み上げていく

ワークをして感じたのは、レゴ・ブロックを扱う手の感触の気持ちよさ。カチッとはまったときには、体で気持ちよさを感じることができます。いきなりタワーを作り始めるのではなく、いくつかくっつけたり外したりしていると、徐々にレゴ・ブロックの感覚がつかめてきました。「テストではないので隣の人の作品を見てもいいですよ」という納富さんの言葉を受け、隣の人が使っていた、「細長いレゴを横向きに使う」というテクニックを真似しました。

作品からストーリーを語る

「レゴ®シリアスプレイ®をするうえで大事なことのひとつは、作品からストーリーを語るということです。ほかの人の作品も見ながら、自分のタワーの『自慢ポイント』を説明します。その際に、自慢ポイントを指さしながら語り、聞く人はその指の先にある作品を見るようにします」

作品を見る理由は、リアルな人間関係を持ち込まないため。たとえば、社内などでワークをする場合、すでに人間関係ができあがっていると、上下関係などが出て、萎縮してしまう場合があるからなのだそう。目を見て話すのではなく、お互いに作品を見ながら話すこと。「レゴ®シリアスプレイ®は作品が全て」なのです。

グループ内で、それぞれの自慢ポイントを語り合いました。それぞれ、「不安定にならないようにした」「ここのアヒルっぽい形がいい」など語り合いました。私はもちろん、細長いレゴ・ブロックを縦に使ったこと。そのおかげで高さが稼げました。

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▲出来上がった作品の中で自慢できるポイントを探し、指をさしながら説明する

「次に、そのタワーに『自分らしさ』を加えてアレンジしてください」

というのが次のワーク。私たちのグループは、自分自身を、バランスをとる天秤になぞらえる人や、回るレゴ・ブロックで楽しさを表現する人、お花で遊び要素を入れる人などがいました。

意図しないものからストーリーを作る

次のワークは、配られた写真の見本と同じ作品を作ること。写真には何種類かの作品があり、どれでも好きなものを選んでよいそうです。

「作ったものを、あなたにとっての『最悪な上司』と考えて、作品を通して最悪な理由を語ってください。レゴ®シリアスプレイ®は、作ったものに意味を与えることが大事。意図するものだけでなく、意図せざるものにも意味を与えていくためのトレーニングです」

トカゲに似た形を「トカゲのように逃げ足が速い」、頭がふたつあるモチーフを「矛盾だらけ」と意味づけをしながら、各自が何とか説明していました。

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▲見本を見ながら作ったものに対しても、ストーリーを与えていく

「ストーリーを語って意味を与えていくのは、レゴ®シリアスプレイ®の最もシリアスな部分です。子どもはメタファーという概念が理解できないので、色とか形などの意味を与えていくことはできません。だからレゴ®シリアスプレイ®は大人向けなのです」

不本意を表す作品から、自分のニーズを見つける

これまではウォーミングアップ。これからが本題のワークです。

「人間関係で不本意だと思ったときのイメージを表現してください。『本意ではない』ということですが、具体的には悲しかったり、イライラしたり、寂しかったりという、ネガティブな感情を引き起こされたときのことを思い出してください。感情が動いた時のことを、できるだけ直感で作品にしてみてください」

それぞれが個人で作品を作ります。時間が来たら、これまでと同じようにストーリーを語っていきます。

「不本意だった話を細かくするのではなく、どこら辺が不本意なのか、色や形を通して意味を語ります。作品には本人の意識、無意識が両方とも反映されているので、『なんとなく作った』などとは言わないでくださいね」

グループ内の女性は、「仕事でクレームを入れてくる人がいる。いきなりひどいことを言ってきて困った」と言います。囲いの中に入っている相手が、狭い視野でいることを表していました。

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▲作品から離れて語ることのないようにする。聞く人も、作品を見ながら話を聞く

私は「相手に伝えようとしたことがうまく伝わらず、相手を怒らせてしまった」様子を説明しました。伝える前にはお花だったのに、方向が曲がり、怒りをあらわす赤いレゴ・ブロックになり、ばらばらの方向を向いてしまうという形です。

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▲ポイントとなる箇所に指をさしながら説明を進める

その後、テーブル内の付箋紙にその時の感情を書いていきます。「悲しい」「イライラした」など、それぞれが思い思いに書きました。

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▲不本意だと思った状況に対して、自分の感情を付箋紙に書いていく

「不本意な感情を覚えると、『本当は相手がこうすべきなのに』と、人を正したり、糾弾する方向に走りやすくなります。そういう意図がみなさんの作品にもあると思います。ところが、その裏には『本意』があります。人は、興味関心のないどうでもいいことには感情が動かないはず。内なる願いが阻害されているから、不本意な気持ちになるのです。今度は、作品を直して本当に望んでいたこと、願い、ニーズを表してください」

それぞれ作品を作り、その後、同じように発表していきます。

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▲「本当に望んでいたこと」を表す作品を作る

同じグループで「クレームを言う人」を不本意なできごととして表していた女性は、周囲に助けてもらうという意図の作品を作りました。

「クレームを言う人にいらいらしていたのですが、本当は周囲の人に助けてほしかったんだと気が付きました。先ほど付箋紙に『悲しい』という気持ちを書いて、なぜ悲しいのか考えたら『助けてほしかった』のだとわかったんです」

私は、自分の気持ちが相手にうまく伝わっている、という作品に。その際に、相手が受け止めきれるような、受け止めやすい小さな形のレゴ・ブロックを選びました。「自分の選び方も違っていればよかった」と気づくことができました。

それらのストーリーを語った後、その時の感情をさらに付箋紙に書いて、ワークは終了です。

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▲本当に望んでいたことが実現したら、どんな感情になるか付箋紙に書く

「これまでの社会では、感情を押し殺して仕事をするのがよしとされていました。ところが、価値観が変わりつつあり、企業も変化しています。感情を表現して、やりとりしたうえで、いい関係性を作っていくことが大切だと見直されています。それは、家族やパートナーとの間でも同じ。相手を変えようとしたり、相手を律するのではなく、自分の願いや感情を相手に伝えれば対話につながっていきます」

仕事の現場で重視されがちな客観性や「べき論」を振りかざしてもなかなかうまくいかないもの。感情ベースにコミュニケーションを取り、人間関係を構築していくことこそ、これからの組織の在り方になっていくのかもしれません。