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【イベントレポート】感情は抑えるのではなく、方程式で理解して「味方につける」

株式会社リクルートスタッフィングが運営するITSTAFFINGでは、弊社に派遣登録いただいている皆さまのスキル向上を支援するイベントを、定期的に開催しています。

2018年7月13日のイベントでは「ストレスだらけ、モヤモヤばかりの仕事 『その感情を味方につけるコツ』伝授します!」と題して、臨床心理士の関屋裕希さんを講師にお迎えし、ストレスフルな職場環境や仕事によって生まれてくる感情について、どのようにうまく向き合っていくのかを教えていただきました。

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■今回のイベントのポイント

・イライラや不安や落ち込み、ネガティブ感情は私たちの敵なのか?
・これを知るだけでも楽になる!「感情の方程式」
・実践!マインドフルネスのエクササイズ
・感情のもつ機能を、普段の行動に活かすには


【講 師】関屋 裕希さん
▲【講 師】関屋 裕希さん
臨床心理士。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野 客員研究員。専門は産業精神保健(職場のメンタルヘルス)であり、おもに認知行動アプローチを活用した、従業員や管理監督者向けのストレスマネジメントプログラムの開発に従事。業種や企業規模を問わず、ストレスマネジメントに関する講演、企業の組織的なストレス対策に関するコンサルティング、執筆活動を行っている。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

イライラや不安や落ち込み、ネガティブ感情は私たちの敵なのか?

感情は、どうにかしなければいけない「敵」として扱われている印象が多いもの。「なるべくなら、持たないほうがいい」とか「抑制したり、なかったことにしたい」と思うかもしれませんが、心理学では、なかったことにしたり、気にしないようにしようとすればするほど、そのことにとらわれてしまうそうです。

また、感じないように感情にフタをしてしまうと、喜びや楽しさというポジティブな感情まで感じにくくなってしまうというデメリットもあるのだとか。

それならば、感情を味方につけてしまおう、というのが関屋さんからの提案です。

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▲感情とうまく付き合っていくには、感情を味方に。そのためには感情を知ることから始める

たとえば、誰かを味方につけたい場合、まず相手のことをよく知るところから始めます。同じように、感情を味方につけるには、まず「感情」というものをよく知るところから始めるのだそうです。

これを知るだけでも楽になる!「感情の方程式」

関屋さんによれば「どんなときに、どのような感情になるかは、実は方程式のように決まっている」といいます。

たとえば「怒り」は、次のような方程式で表せるのだそうです。

怒り=【大事なもの】×【傷つけられる】

大事なものを壊されたとき、大事な人が悪口を言われているときなど、大事なものが傷つけられたときに怒りの感情が湧いてくるという意味です。「大事な」という部分が重要で、大事でなければ怒りも湧きません。買い替え間近のカバンにジュースをこぼされても、「そろそろ買い替えようと思っていたし、まぁ、いいか」と、怒りもそこそこなのは、もうそれほど大事でないからです。

次に悲しみです。悲しみは次の方程式で表されます。

悲しみ=【大事なもの】×【失う】

たとえば、大事な人との別れや、成功させたいという思いで一所懸命にやってきた仕事が終わったときなどに悲しみを感じます。

落ち込みの方程式は次のようになります。

落ち込み=【過去の失敗】×【エネルギー切れ】

いつもなら友達に誘われたら乗るのに、うまくいかなかったことがあってエネルギーが切れていると、誘いにも乗りません。ああすればよかった、こうしなければよかったという思いから抜け出しにくくなってしまいます。

そして最後は、不安の方程式です。

不安=【未来のこと】×【わからない】

「来週の会議は大丈夫?」「これ本当にバグが出ない?」と、誰でも不安な気持ちになることがありますが、それは「未来のこと」と「わからない」という2つの要素が関わっているということです。

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▲感情が方程式で表せるということに、参加者は一様に驚いた様子

関屋さんがカウンセリングを行う際、「すごく怒っている人が来た」というときには、まず「この人の傷つけられた大事なものは何だろう」と考え、悲しんでいる人が来たときは「この人が失った大事なものを取り戻すことはできるかな?」と考えながら話を聴くのだそうです。

このように「怒り」を分析するには、まず、「傷つけられている大事なもの」は何かを探ります。それは、夢や理想、仕事、周囲からの評価、才能、能力、時間、関係、健康、価値観、結果・成果など、ケースバイケースです。

ここで、関屋さんが具体例を紹介。

上司が「やりたいようにまとめてみろ」と自分に仕事を振っておいて、後から「なんだ、この企画書は!タイトルがダメ、コンセプトも分かりにくい」など細かいダメ出しをしてきたとき。

“職場あるある”なことですが、怒りを感じるのは「取り組んだ仕事」「かかった時間」が傷つけられたからですね。

もう一つの事例は、やはり上司が、コピー機まわりの雑用(片付け等)を、コピー機の近くに席がある自分にばかり頼んでくるというもの。これを方程式に当てはめると、

「自分のやるべき仕事にかける時間」×【傷つけられる】=怒り

と表すことができます。

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▲職場での“あるある“に、自分が思い当たるケースを当てはめ、うんうんと頷く参加者たち

このように、感情の方程式を知っていると、わけも分からず腹が立つ、悲しい、つらいということが減り、「〇〇が大切だから腹が立つんだ」「△△を失くしたから悲しいんだ」と、自身の感情を俯瞰することができるようになります。

実践! マインドフルネスのエクササイズ

感情を俯瞰して見るためのトレーニング方法に、マインドフルネスがあります。マインドフルネスとは「今ここでの経験に、評価や判断を加えることなく、能動的に注意を向けること」を指します。大切なのは以下の3つだそうです。

特徴1:今ここに注意を向ける
特徴2:評価や判断を加えない
特徴3:受け身ではなく能動的に注意を向ける

マインドフルネスは、主観的に感じるストレスの解消や、うつ病の予防のほか、集中力の向上、創造力(クリエイティビティ)の発達、コミュニケーション力の向上などにも効果があると言われているそうです。そこで、会場の参加者と一緒にマインドフルネスの基礎トレーニングである集中瞑想を実践しました。

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▲集中瞑想のやり方

1.背筋を伸ばし前方1.5mのあたりをぼんやりと見つめる
2.呼吸に注意を向けて、吐く息を数える
3.10まで数えたら、また1から数え始める
4.息を数え続ける
5.意識がそれたら静かに呼吸のカウントに戻る

これを5分間ほど、行いました。このトレーニングを繰り返し続けることで、自分の内側にフォーカスすることに慣れていくのだそうです。

感情のもつ機能を、普段の行動に活かすには

感情にフォーカスすることができるようになったら、今度は感情のもつ機能を普段の生活に活かすことに取り組みます。

怒りを題材に考えてみると、怒りは、「大事なものが傷つけられたとき」に出てくる感情でした。傷つけられていた大事なものが何だったかをヒントに、それを守るための行動をとります。

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▲大事なものをヒントに行動する

そしてこのとき、やってはいけないことが2つあります。それは、

・爆発させる
・我慢する

ということです。

怒りを爆発させてしまうと、言い合いになり、もっと嫌な気持ちになったり、相手との関係が、より一層悪くなってしまいます。我慢をすると、今度は不満が溜まります。これは体に悪く、脳梗塞や心臓・循環器系の疾患につながることが分かっているそうです。

爆発させず我慢もせずに、大事なものを守るには、関係を「つくる」ように怒りを表現することを心がけます。具体的には「DESC法」に則って相手に伝えるのだそうです。

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▲DESC法を使うと、関係を壊さず、不満もため込まずに、怒りを予防する関係を「つくる」ことができる

先ほど職場の“あるある”で登場した、コピー機まわりの雑務を頼まれてしまう場合の対応は、次のようになります。

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▲Cまで伝えることは、なかなかできないので、まずはDとEまでを伝えてみるのが関屋さんのお勧め

こうして相手に怒りを伝えると、スッキリすると同時に、うまく伝えられたという達成感も感じられるという二重の効果があるといいます。そして、大事にしたかった「自分のやるべき仕事にかける時間」を守ることもできます。

今回のイベントを通じて、感情を味方につけることで、周囲はもちろんですが、自分の心身の健康とも、上手に付き合っていけるのだということが、よくわかりました。関屋さんの著書『感情の問題地図』では、不安や落ち込みといった他の感情への対策についても、具体的なTIPSを交えながら書かれていますので、一度、じっくりと読んでみてください。