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【イベントレポート】エンジニアが生き残るためのテクノロジーの授業 [第1回]「ITエンジニアに求められるスキルと、業界のトレンドを知る」

株式会社リクルートスタッフィングが運営するITSTAFFINGでは、弊社に派遣登録いただいている皆さまのスキル向上を支援するイベントを、定期的に開催しています。

2018年4月18日のイベントでは「エンジニアが生き残るためのテクノロジーの授業」を開催。

技術士の資格を持ち、著書に『エンジニアが生き残るためのテクノロジーの授業』(翔泳社刊)を持つ増井敏克さんが、同書をベースに、エンジニアが生き残るためのテクノロジーについて、6回に分けて解説します。今回はその第1回目です。

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■今回のイベントのポイント

・ITエンジニアを取り巻く環境の変化
・ITエンジニアのキャリアと求められるスキル
・ビジネス目線でITを考える
・IT業界のトレンド(人工知能/IoT/こどものプログラミング教育)


【講 師】増井敏克さん
▲【講 師】増井敏克さん
増井技術士事務所代表。技術士(情報工学部門)。情報処理技術者試験にも多数合格。ビジネス数学検定1級。「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピュータを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や、各種ソフトウェアの開発、データ分析などを行う。著書に『おうちで学べるセキュリティのきほん』『プログラマ脳を鍛える数学パズル』『エンジニアが生き残るためのテクノロジーの授業』『もっとプログラマ脳を鍛える数学パズル』(以上、翔泳社)、『シゴトに役立つデータ分析・統計のトリセツ』『プログラミング言語図鑑』(以上、ソシム)がある。

ITエンジニアを取り巻く環境の変化

増井さんは、手始めに、いくつかの調査結果についてグラフを示してくれました。「世界のICT市場の推移」という調査では、今後もICT市場は右肩上がりで成長していくことが予測されています。ICT市場の成長は、IT人材の不足という切実な問題を生じます。IPAの「IT人材の“量”に対する過不足感」という調査では、IT人材が明らかに足りていないと感じている企業が年々増え続けています。

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▲右肩上がりで成長するICT市場とIT人材不足。エンジニアは環境の変化に対応しなければ生き残れない

では、そうした人材をどう調達するか。案としては、社内で調達する(別部署から確保し新たなスキルを身に付けてもらう)、社外から調達する(中途採用)、外部に委託するという3つが挙げられます。面白いことに、ユーザー企業とIT企業では「社内調達」が40%以上を占め、ネット企業では「中途採用」が55%近くを占めています。

いずれにせよ、エンジニアが生き残るためには、新たなスキルを身に付け、環境の変化にいち早く対応していく必要があるのです。

ITエンジニアのキャリアと求められるスキル

では、どのようなスキルを身に付けていけば良いのでしょうか。増井さんは「時代が変わっても、変わらない知識を持っておくことが大切」と強調します。

これまでは、大企業における典型的なエンジニアのキャリアパスといえば、プログラマからSEへステップアップしていくというものでした。しかし、現在は役割も細分化・専門化され、必要な知識やスキルは大きく異なります。

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▲これまでと違い、現在のキャリアパスは多様化している

IPAの調査でも、変化に不安を感じているエンジニアが半数前後を占めているという結果が出ています。そのため、新しい技術やスキル習得に自主的に取り組む必要があります。

一方で、企業の経営者が今後エンジニアに求めていくものとして「事業全体の技術を俯瞰し、全体を設計する能力」「ビジネスアイデア構想力」が挙げられています。

つまり、個々の技術よりも、経営者が求めているのは全体を見る能力だということ。特にビジネス目線は外せない要素となりつつあります。

ビジネス目線でITを考える

たとえば、Webで収益を上げるには、どうすれば良いでしょう? すでにいくつかのモデルがあります。たとえば、サービスの提供(サービス利用料を徴収する)、広告を入れる(広告収入)、Webと連動したWeb以外のサービスから得る、人と企業のマッチングを図る(人材紹介)などです。

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▲マネタイズもエンジニアが考えていく時代へ

これからの時代は、どうやってマネタイズするかということも、エンジニアが考えていかなければなりません。

たとえば情報を収集するセンサーは、自動販売機、自動改札、POSレジなど、すでに私たちの暮らしのいたるところで利用されています。今年はビッグデータ利活用元年と言われており、そうしたセンサーで収集・蓄積されたデータの利活用が本格的に始まろうとしています。

「従来は課題を解決するために、新たな技術を生み出してきました。しかし、今はそうではありません。技術も一通り出そろっており、あとは、それらをどう組み合わせて課題を解決していくか――そんな発想が求められていきます」(増井さん)

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▲課題解決のために技術を生み出すのではなく、これからは技術を組み合わせて課題を解決する

IT業界のトレンド

第1回の締めくくりは、今後注目すべきIT業界のトレンドについて紹介してくれました。

まずはAIです。「AIに関わらずにいられるのは、ここ10年ぐらい。今後は、必ず何らかの形で関わることになる」(増井さん)とのことでした。

AIを根本から学ぶには高度な数学の知識が必要ですが、実際には数学を知らなくても、Pythonがわかれば、豊富なライブラリを使って簡単にAIの応用システムを構築できるそうです。

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▲Pythonと豊富なライブラリを使えば、たった10行で機械学習を実装できてしまう

次にIoTです。IoTは、すでにさまざまなところで活用されており、最近、各社がリリースしているスマートスピーカーもIoTの応用製品の一つです。では、IoTの基礎は、どうやって学べば良いのでしょうか。

増井さんのお勧めは超小型PC「Raspberry PI」です。各種センサーを接続してIoTの基礎を学ぶのに最適な製品だそうです。「数千円で購入できるので、仕事でIoTに携わる機会がないという人も、自宅で触れてみると良いでしょう」(増井さん)とのことでした。

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▲Raspberry PIを手に「仕事でやっていないから」ではなく、まずは自分でやってみることが大切とアドバイス。

もう一つ、面白かったのが、こどものプログラミング教育の話。2020年に小学校でもプログラミング教育が開始されます。しかし「プログラミング」という教科が増えるのではなく、各教科に「プログラミング的思考を取り入れる」とのこと。算数なら、三角形を描く手順を、プログラミング的思考で考えさせるということです。まさに不変のITスキルだと感じました。ただし、現状では教えられる教員がいないという課題もあり、そこにも何らかの形でエンジニアの活躍の場がありそうです。

AIやIoTは、すでに実務でも使われ始めています。「知らない」「まだ早い」は通用しません。「まずは自分でやってみるべき」というのが増井さんのアドバイスでした。

AIもIoTも興味はあるものの、忙しさを理由に、なかなか手を付けられません。しかし、今回のセミナーを聞き、そんなことは言っていられません。まずはPythonをインストールするところから始めてみようと思いました。