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【イベントレポート】派遣エンジニアとして働くために知っておくべき「スキル」とは?

株式会社リクルートスタッフィングが運営するITSTAFFINGでは、弊社に派遣登録いただいている皆さまのスキル向上を支援するイベントを、定期的に開催しています。3月28日に開催したのは、高橋裕之さんによる、リアル版『派遣エンジニアとして働くために知るべき「スキル」を理解する』イベント。“エンジニアスキルの全体像”を知っておくだけで、これからの行動が変わるはずです。

■今回のポイントは

・モチベーションとスキルの相関関係を知る
・ハードスキル、ソフトスキル、メタスキルの違いを知る
・固定思考と成長思考の違いを理解する

いくつかのワークを交えながら、スキルについて理解を深めていきました。これからの自分の行動にもよい影響があることでしょう。

【講 師】ウイングアーク1st株式会社 高橋裕之さん
▲【講 師】ウイングアーク1st株式会社 高橋裕之さん
ウイングアーク1st株式会社 技術本部SVF・SPA統括部 ソフトウェアエンジニアリング部 部長。ITエンジニアとして10社を超える現場、いくつものプロジェクトに参画。次第にIT業界の影に潜むプロセス、マネジメント、人間系の問題に気付き、日々その解決のために活動している。派生開発推進協議会(AFFORDD)役員。認定スクラムマスター(CSM)、認定スクラムプロダクトオーナー(CSPO)、認定スクラムプロフェッショナル(CSP)。

モチベーションとスキルには相関関係がある

高橋さんは、IT業界29年目。さまざまな企業や業種業態を経てきました。まず、その経緯をグラフにしたものをスライドに映します。アップダウンが激しく揺れ動いているグラフです。

「スキルのスタートから今までのモチベーションをグラフにしたものです。皆さんにもこういうグラフを書いてもらいます。スキルとモチベーションには、相関関係があると思っているからです」

高橋さんは、転職のタイミングや、結婚、子どもの誕生といったライフステージの変化、リーマンショックなどの社会環境の変化などをグラフにプロットしながら、モチベーションの変化を解説していきました。

その後、参加者にワークとして取り組んでもらいます。スキルのスタートを左端に、現在を右にして時間軸を置いたら、それ以外は比較的自由に書いてよいとのこと。モチベーションの高いとき、低いときにどんなことがあったのか、どんなイベントがモチベーションに影響を与えたかを書いてもらいました。さらには、書いたものを隣の人とシェアします。

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「スキルを手に入れるときには、モチベーションが上がっている」と高橋さんは言います。スキルを手に入れているからモチベーションが上がっているのか、モチベーションがあるからスキルが手に入るのか、因果関係は定かでないにしろ、相関関係があるのは確かなようです。

エンジニアのスキルとは「ハードスキル」「ソフトスキル」「メタスキル」に分けられる

「エンジニアのスキル」とひとことで言っても、さまざまな種類があると高橋さんは説明します。大きく分けて「ハードスキル」「ソフトスキル」「メタスキル」の3種類。

それぞれの詳しい内容は、高橋さんのコラムで詳しく紹介されています。
https://www.r-staffing.co.jp/engineer/archive/category/高橋 裕之

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ハードスキルには、書籍やインターネットなどで学べる「自習可能ハードスキル」と、特定の組織に入ることで得られる「組織固有ハードスキル」があります。求人要項で「◯◯の業務知識があると尚可」のように書かれたときは「組織固有ハードスキル」を指すことが多いようです。

ですが、あまり怯む必要はないと高橋さんは言います。なぜなら、もともと組織の中で身に着けるスキルのため、求人側は入社してから覚えてもらえば良いと考えているからです。

むしろ「入社後、ちゃんと勉強してくれるだろうか?」といった普段の学習意欲が問われるので「自習可能なハードスキル」を普段からどのように身に着けているか?が問われる事でしょう。

ソフトスキルはヒューマンスキルとも呼ばれます。そのひとつに「コミュニケーション」スキルがありますが、その仕組みを理解しているか否かでソフトスキルの伸びには差が生まれます。

送り手が「情報」「感情」「意思」「価値」を他人に伝える場合、コンテキスト(文脈)がきちんと合っていれば齟齬は発生しません。ところが現実のコミュニケーションでは情報の送り手/受け手の双方が、人生のなかで得た文化や知識、信念、哲学などを持っています。メールやチャットといったメディアに乗せて情報を送るとき、これらが邪魔をすることが多く必ずしも送り手の意図したメッセージが相手に意図通りに伝わるとは限りません。

このように、情報の伝達にはさまざまな処理が介在するため、もともと質が高いコミュニケーションとは難しいのです。如何に努力してコンテキストをお互いに合わせるか?が重要で、これをコミュニケーション・マネジメントと呼びます。コミュニケーションスキルを伸ばすためには、このような前提を知っておく必要があるのです。

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ほかに、送り手の情報を非言語メッセージと共に読み取る手法「アクティブ・リスニング」や、価値観の違いによる摩擦や対立を解消する手法「コンフリクトマネジメント」と言ったスキルがあります。これらを学ぶことはソフトスキルの向上にとても有効でしょう。

メタスキルはすべての応用スキル

メタスキルとは、スキルを使いこなすスキルだと言えます。たとえば次のようなものです。

・問題の発見力
・問題の形成力(大局的に現象を把握し、仮説を組み立て対策する力)
・問題の解決力
・チームワーク力
・プロセス改善能力

メタスキル習得の大部分は、「自分の仕事経験」から身に付くと高橋さんは言います。よってメタスキルを得るための重要な鍵は、「自分の思考がどの様なマインドセットを持っているか?」です。

ここで、キャロル・S・ドウェック博士の、モチベーション分野での研究(*1)を紹介しました。マインドセットにより「固定思考の人」と「成長思考の人」を分け、比較したものです。それぞれのマインドセットは次のように説明できます。

・固定思考の人
人は生まれながらにして何かについて得意か不得意であり、その状態は変わらないと思っている

・成長思考の人
努力と練習によって能力は身につき、向上していくと考えている

*1 Carol Dweck, Mindset: The New Psychology of Success(New York: Ballantine Books, 2006).

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メタスキルを伸ばすためには、成長思考のマインドセットが必要です。そのためには、次のような言葉を普段自分が発していないか注意したほうがいいそうです。

「それ、私の仕事じゃありません」
「私、その手のツール使ったことがないので」
「自分はこれまでもこうしてきたので」
「社員のAさんより、よっぽど私の方ができます」
「それ、やる意味あるんですか?」

このようなセリフは固定思考の現れです。成長思考の人は難しい問題を「学習の機会」としてとらえますので、当然新しいスキルや知識がアップしていきます。

メタスキルは、履歴書やレジュメで表現しにくいものの、仕事の現場で重宝されることは間違いありません。つねに成長思考のマインドセットを持ち、経験と実践を経てメタスキルを向上させるよう心掛けるとよいでしょう。

自らを成長思考にするため、パフォーマンス目標を作るワークを最後に行いました。アジャイル開発でよく使われる「ユーザーストーリー」を活用。次のようなテンプレートに記入していきます。

・今日の日付
・「(誰/役割)として(何を/アクション)したい。それは(なぜ/理由)のためだ」
・どうなれば目標に近づいたと言えるか(Acceptance Criteria:受け入れ基準)

次のような記入例が紹介されました。

『ITエンジニアとしてコミュニケーションスキルを身に着けたい。それはもっと職場の人と打ち解けていろいろと教えていただくためだ』
Acceptance Criteria:
f:id:itstaffing:20180510120827j:plain コミュニケーションに関する書籍を1冊完読する
f:id:itstaffing:20180510120827j:plain 打ち合わせでは必ず3回以上発言できている
f:id:itstaffing:20180510120827j:plain ほかの人から自然とアドバイスをもらえるようになっている

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時間を取って、それぞれシートに記入してもらいました。それにより、それぞれの目標と理由、やるべきことが明らかになっているはずです。

自分のスキルを伝えるタイミングは転職や職場訪問など多々あります。来るべきときに備え、普段からスキルの棚卸しや、スキルを伸ばすための方法を知っておくとよいでしょう。