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【イベントレポート】著者が教えるプレゼンの極意!自分の意見に自信が持てる『伝え方』

株式会社リクルートスタッフィングが運営するITSTAFFINGでは、弊社に派遣登録いただいている皆さまのスキル向上を支援するイベントを、定期的に開催しています。

9月7日に開催したイベントは、書籍『アメリカの大学生が学んでいる「伝え方」の教科書』を監訳された狩野みきさんがご登壇。伝えるためのプレゼンテーションの方法を教えていただきました。

■今回のイベントのポイントは……

・「聞き手責任」でなく「話し手責任」という意識を持つ
・ストーリーを活用する方法をマスターする
・プレゼンテーションの内容を決める順序と「型」を覚える

プレゼンテーションのコツだけではなく、人前で話す機会があるならマスターしておきたい考え方やテクニックをお話いただきました。

【講 師】狩野みきさん

▲【講 師】狩野みきさん
慶應義塾大学法学部卒、慶應義塾大学大学院博士課程修了(英文学)。慶應義塾大学、聖心女子大学、ビジネス・ブレークスルー大学講師。考える力イニシアティブ、THINK-AID主宰。20年以上にわたって大学等で「考える力」「伝える力」と英語を教える。著書に『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』『世界のエリートが学んできた自分の考えを「伝える力」の授業』(日本実業出版社)『「自分で考える力」が育つ 親子の対話術』(朝日新聞出版)『超一流の「自信思考」』(大和書房)『知られざる英会話のスキル20』(共著、DHC)『オーレックス和英辞典』(旺文社)『プログレッシブ英和中辞典』(共同執筆、小学館)など多数。

聞き手が理解できないのは話し手の責任

プレゼンテーションをしても、聞き手が集中できなかったり、つまらなそうにしたり、果ては寝てしまうということもあります。それは、聞き手が悪いのでしょうか?あるいは、話し手が悪いのでしょうか?

考え方次第で、どちらにもなり得る、と狩野さんは言います。

「日本語でコミュニケーションをとる場合には、共通の文化が前提ですから、聞き手の責任となることが多い。『空気を読め』とか、『行間を読め』と言いますね。ところが、英語圏ではそうではなく『話し手責任』。特にアメリカはさまざまな文化を持つ人種が集まっていますから、共有している情報のパーセンテージがかなり低く、伝わらなければ話し手の責任となるのです」

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例えば、家族なら「聞き手責任」でもいいかもしれません。家族で食事しているときなら「あれ取って」で通じるでしょう。ところが、プレゼンテーションは家族のように「ツーカーの仲」で伝わらない場合がほとんど。だからこそ「話し手責任」である必要があります。

ただし、何から何まで説明すればいい、ということではありません。しっかりと聞き手をリサーチすることが大切です。「相手がどういう人で、どういう知識があり、どんな経験があり、何にどれだけ精通しているか」などの情報をできるだけ集めておきましょう。その上で、どこまで責任を負えばいいか考えるのです。

「話し手責任という考え方では、多くは『結論』を先に話します。日本人は苦手とするところ。通常のビジネスシーンではマストと考えた方がよいでしょう。例えば、会議に30分の時間が設けられていても、相手に電話がかかってきたり、急用ができるかもしれません。そういう場合には、最初に結論を言っておかないと仕事が進まなくなってしまう。それも話し手の責任ですね」

ストーリーを効果的に使う

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結論から先に言うロジカルなプレゼンテーション以外では、最近注目されているのがストーリーを盛り込む方法です。ストーリーとは、TED Talksに代表されるアメリカ流のプレゼンでよく見る手法で、ちょっとしたエピソードや経験談などのこと。

ストーリーには、実は結論がない場合が多いです。例えば、シンデレラの話では、結論や教訓をいくらでも読み取ることができます。人によって解釈は、次のようにバラバラになるかもしれません。

・女性はかわいい方がいい
・素直で清らかな心を持っていれば報われる
・結婚が最終的な幸せである

ストーリーを挟むときには、基本的に結論を聞き手に考えさせます。「ここから何を読み取ればいいのだろう?」と思わせることで、プレゼンテーションに取り込むのが狙いです。

ストーリーを聞いて結論を導き出すことも、西洋人の方が慣れています。例えば、聖書は具体的な「お話」の集まり。その「お話」から、読み手の解釈で結論を導き出すのです。一方で日本人は、ストーリーを語るときにも結論を付けてしまいがちです。なぜなら、作文では最後に「まとめ」を入れるよう促されるから。夏休みの思い出を書いた後に「楽しかったです」や「また行きたいです」と書いてしまうのはそのためもあります。

「シンデレラのお話の最後に『清い心を持っていれば報われますね』と言っているようなものです。結論は言わず“ストーリーだけで終えた方がよい”ということがイメージできるのではないでしょうか?」

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ストーリー作りに慣れていない人は、4コマ漫画を「棒人間」でよいので書いてみるのがおすすめ。4コマ漫画には文字を詰め込めないため、要点を整理する必要がでてきます。最初は緩急の付け方も上手くいかないと思いますが、徐々に全体像をつかめるようになっていきます。

ゴールを決めてから中身を決めるまでのステップ

プレゼンテーションのテーマが決まっているときに、まず決めるのは「ゴール」です。ゴールは必ず「聴衆に~してもらう」という文にしましょう。自分が話したいことではありません。話し手責任ですから、聴衆ありきで伝え方を考えます。

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また、ゴールは1つに絞りましょう。いくら説明しても「2~3個ではだめですか?」という質問を受けますが、複数個用意するのは、徒競走のゴールがいくつもあるようなものなので、どこに走ればいいのかわからなくなってしまいます。

ゴールとは、「目標」と言い換えてもよいでしょう。では、「目的」は何でしょうか?目的は通常次の2種類に分けられます。

a.情報を伝える(情報タイプ)
b.説得する(説得タイプ)

「ゴール」と「目的」は同時進行でたいてい決めることになるでしょう。大切なのは、どちらも文字にすることです。

次に、「サマリーセンテンス」「メインポイント」を決め、プレゼンテーションの「型」に落とし込んでいきます。

サマリーセンテンスとは、プレゼンテーションの概要を一文で言い表したものです。例えば、同僚と廊下ですれ違い「今度プレゼンするんだって?どんなこと話すの?」と聞かれたとき、ひとことでずばりと言えるものでなくてはなりません。ここで注意したいのは「○○なのか」という疑問形にしてはいけないということ。必ず言い切る文にしてください。

メインポイントは、プレゼンテーションの肉付けに当たる部分です。例えば30分の時間が与えられていたとしても、5つに収めることが大切。もしどうしても情報が多くなってしまう場合は、分類して5つ以内にすればよいのです。

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プレゼンテーション5つの型とは?

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プレゼンテーションを組み立てるときには、次の5つの型に当てはめましょう。

1.時系列型【情報】
時系列で伝えたい時。イベント・歴史・プロセス説明・デモなど

2.一定方向型【情報】
上→下、左→右など、一定方向に沿って説明したい時

3.因果関係型【情報】【説得】
因果関係を示したい時

4.問題解決型【説得】

5.サブテーマ型【情報】【説得】
誰か・何かについて複数の要素を伝えたい時

ここで、講師の狩野さんより、例題が出されました。例えば、次のようなサマリーセンテンスとメインポイントがある場合、どんな型を付ければよいでしょうか。

・サマリーセンテンス
英語力がメキメキ伸びる、画期的オンライン学習サイト(無料)を提案する

・メインポイント
既存の英語学習サイトAの優秀成績者を「教師」として活用
Aの受講生のモチベーションアップ
数人の英語専門家を監修者に
ディスカッション・フォーラム形式 + Skype

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参加者に挙手をしてもらうと、「4.問題解決型」「5.サブテーマ型」に人気が集まりました。これには、1つの正解があるというわけではありません。なぜ選んだかの理由がしっかりしていれば大丈夫です。確固たる根拠を持って、型を決めましょう。

最後に、狩野さんからプレゼンテーションをするときの注意点が説明されました。世の中には、すばらしいプレゼンテーションの動画が出回っています。参考にするのはよいものの、まったく同じにする必要はありません。一人ひとりの個性を活かすべきでしょう。

狩野さんが教えていた学生に、サッカー部の男子生徒がいました。「一番苦労した話」というテーマでプレゼンテーションをしてもらった際、次のような話をしました。

「高校生のときに怪我をしてドクターストップがかかったが、その言葉を聞かずに試合に出てしまった。そこで怪我が悪化し、選手生命が絶たれた。人生には、無理をしていいときと、してはいけないときがある」

そのような内容を、小さな声でぽつぽつと語ったのです。教室は静まりかえり、涙を流す生徒もいたそうです。彼が経験したことを、彼の言葉で伝えたからこそ、聞き手に伝わったのでしょう。まず、自分の得意や強みを客観視してから、今回のイベントで学んだ技術を使う。そうすれば、鬼に金棒となるはずです。

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