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【連載】第10回 田中淳子の「人と話すのが苦手だ」と思ったら読むコラム

最終回 コミュニケーションはスキル。磨けば必ず上達する。

このコラムは、人材教育コンサルタント/産業カウンセラー/国家資格キャリアコンサルタント田中淳子さんの「対人力養成講座」です。これまで「今すぐできるけど、一生役立つ力」がつくための講義をお届けしてきましたが、今回が最終回。ぜひ最後までご覧ください。

過去の連載を見逃した方はこちらへ ↓

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【講 師】
人材教育コンサルタント/産業カウンセラー/国家資格キャリアコンサルタント 田中淳子

コンピュータメーカー勤務を経て、1996年よりグローバルナレッジネットワークで、ITエンジニア向けヒューマンスキル研修プログラムを開発、実施。著書に『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』『現場で実践!若手を育てる47のテクニック』など多数。

■今回のポイント

コミュニケーションスキルを磨くためには、

・相手の話をきちんと深く丁寧に聴き、正しく理解する
・自分の言いたいことを相手が理解しやすいように伝える

これらを意識して繰り返し使っていく。
それでもやっぱりコミュニケーションをとるのが苦手!という方は、

・自分に期待されている役割を「着ぐるみ」を着ている気分で果たす

このポイントを、仕事のときにだけ、試してみましょう。

コミュニケーションは、「スキル」。だから、繰り返すことで上達する

「どうせ働くなら、気持ちよく働きたい」

誰もがそう思っている。1日の1/3以上を費やす仕事で毎回嫌な気持ちになったり、心が動揺したり、やる気がなくなったりするというのは、とても不健康だ。気持ちよく働くための要素はたくさんある。

働く環境。集中して仕事ができる机や座り心地のよい椅子。適切な空調。休憩できる場所。こういった物理的な要素はもちろん大事だ。

仕事内容。やりたいことをする方が楽しいし、やる気も出る。組織に属していたら、やりたくない仕事、興味のない仕事もしなければならないことはある。そういう時はどうすれば楽しく仕事ができるかを考えるなど、誰もが自分なりの工夫をしているはずだ。

だが、なんといっても気持ちよく働くために重要なのが、「人と人とのコミュニケーション」だろう。周囲の人との間で物事が上手く進んでいけば、仕事はスムーズになるし、高い成果が生み出される。

例えば、相手が何を言っているのか理解できなければ、いつまでも相手を満足させられる提案はできない。自分が出した指示を相手が理解しないまま仕事をして、期待と異なる結果が出てきたら、やり直しが発生する。余計に時間もかかるし、労力も費やしてしまう。

メールでのやり取りがかみ合わないと、一往復で済むはずのメールが何往復しても、仕事が全く先に進まないことだってある。

コミュニケーションに費やすエネルギーを減らすことで、仕事そのものに注ぐエネルギーを増やすことができ、それだけいい仕事ができるようになる。だからこそ、コミュニケーションのスキルを磨く必要があるのだ。

相手の話をきちんと深く丁寧に聴き、正しく理解する。
自分の考えや想いを相手が理解しやすいように伝える。

この連載でずっと解説してきたこれらは、全て「スキル」でカバーできる。「スキル」である限りは、練習を繰り返せば、できるようになるものばかりだ。

例えば子どもの頃、自転車に乗れるようになるために練習したことがあるだろう。何度も転んで怪我もした。それでもあきらめずに練習し続けていたら、いつか無意識のうちに自転車に乗ってどこまでも行くことができるようになったのではないか。

コミュニケーションもそれと同じだ。「スキル」なのだから諦めずに取り組んでいけば、いつかは人と上手に関われるようになる。

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やっぱりコミュニケーションが苦手!という人には、「着ぐるみ理論」

「コミュニケーションなんて私の仕事にはほとんど必要ないですよ」
という人が時々いる。

「私の仕事は、個人でするもので、与えられた仕様のコードを書いて提出すればそれで終わりですよ」と思う人もいるかも知れないが、よく考えてみてほしい。

そもそも、その「仕事」は誰かが持ってきてくれたものである。また、その「仕事」の先には誰かが必ずいる。決して誰とも無関係に仕事だけが存在することなんてない。誰の、どんな仕事であっても、直接に、間接に、多数の人が関わっている。他者との関わりなしに、自分の仕事は決して進んではいかない。

これからの時代、さらに仕事は複雑になり、高度になるだろう。一人の力でできることには限界があり、大勢でチカラを合わせて一つの結果を目指すことが多くなる。その時、どうやってコミュニケーションのコストを減らすかは大きな課題である。

そうは言っても、やっぱり、「コミュニケーションって苦手なんだよね」という人にお奨めしたいのが、「着ぐるみ理論」だ。もう20年くらい前から、私がずっと提唱している考え方である。

仕事の場において、素の自分をそのままさらけ出す必要はない。それぞれが、自分に期待されている役割を「着ぐるみ」を着ている気分で果たせばよい。

「プロジェクトマネージャ」という「着ぐるみ」。「部下」という「着ぐるみ」。「Webデザイナー」という「着ぐるみ」。「コンサルタント」という「着ぐるみ」。一人が複数の着ぐるみを持つこともある。そういう「着ぐるみ」を身にまとい、「仕事」をしている、と捉えるのである。

人の話を深く丁寧に聴き、正しく理解しようと努める。相手が理解できるように説明する。相手と自分と両者の満足度が上がるように問題を解決する。それらは全て、「着ぐるみ」を着た自分が果たすべき役割と考えるのである。

性格なんか変えなくてよいし、プライベートな自分に戻ったら人と関わらないでじっと寡黙な生活を送るのもよいだろう。

「着ぐるみを着た自分が仕事上必要な役割を演じる」。

そう考えたら、誰にとってもコミュニケーションスキルも使いやすくなるはずだ。

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終わりに

私自身、20代は人とよく衝突することもあった。仕事が上手くいかなかったのは、仕事そのものの能力以上に、人との関わり方に問題があったと今ではわかる。

20代後半で、コミュニケーションの「スキル」を学習し、ロールプレイのように日常でも実践してみたら、30代半ばくらいから、周囲ともかなり上手くやれるようになった。とにかく、意識して「スキル」を使ってみたのだ。

これを読みながら、「周囲と上手くいかないんだよな」「人とやっていくのが苦手なんだよな」と悩んでいる人がいたら、小さなことから始めてみてほしい。「これならできそうだ!」と思ったことを日常のコミュニケーションに取り入れてみる。最初は意識して使うことになるだろうが、繰り返しているうちに自然に使えるようになっていく。

『「人と話すのが苦手だ」と思ったら読むコラム』というタイトルで続けてきたこのコラムも今回が最終回。

「同じやり方をして異なる結果を期待するのはおろかなことである」とアインシュタインは言ったとか。今よりいい仕事をするために、コミュニケーションもこれまでと異なるやり方を試してみてほしい。

(編集後記)
全10回のコラムにおいて、「これで失敗していたんだなあ」と改めて気付かされた方も、多かったのではないでしょうか。自転車の練習のように、何度も繰り返すことで上達する、コミュニケーションスキル。もう一度第1回目から見直し、これならできそう!というポイントを実践してみましょう。「一生役立つ力」に、きっと変わるはずです。