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【連載】第8回 田中淳子の「人と話すのが苦手だ」と思ったら読むコラム

第8回 話が長い人にあてはまる5つの特徴とは?

今回は、人材教育コンサルタント/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント田中淳子さんの「対人力養成講座」第8回です。「今すぐできるけど、一生役立つ力」がつくための講義をお届けしますのでどうぞお見逃しなく。

過去の連載を見逃した方はこちらへ ↓

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【講 師】
人材教育コンサルタント/産業カウンセラー/国家資格キャリアコンサルタント 田中淳子

コンピュータメーカー勤務を経て、1996年よりグローバルナレッジネットワークで、ITエンジニア向けヒューマンスキル研修プログラムを開発、実施。著書に『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』『現場で実践!若手を育てる47のテクニック』など多数。

■あなたは話が長い人?セルフチェックしてみましょう。

□ 結論だけ言えばいいのに、過程(いきさつや背景など)を延々と話す
□ 沈黙に耐えられず、常に話し続ける
□ 自分が知っていることを全て話そうとする
□ 自分の思いも語り始める
□ 同じ話を何度も繰り返す

一つでも心当たりがある方、要注意です。具体的にどんな擦り合わせ方があるかもご紹介しています。最後までご覧ください。

話の長い人がいる。話し出すととにかく長い。だから、何を言っているのか、聴いている側はどんどんわからなくなる。

話が長い人には以下の特徴があると考えられる。

【話が長い人に考えられる特徴】
1.結論だけ言えばいいのに、過程(いきさつや背景など)を延々と話す
2.沈黙に耐えられず、常にしゃべり続ける
3.自分が知っていることを全て話そうとする
4.自分の思いも語り始める
5.同じ話を何度も繰り返す
※この5つ以外にも「そもそも論に入りこむ」「関係ない話に脱線していく」などもある。

こういう状態に陥る人は、口数が少ないわけではないが、話し上手とは言わない。話しベタである。聴きベタでもある。

聴き手の状況や様子はもちろん、聴き手が知りたがっていることや、聴き手が理解すべきことを考えようとせず、自分の言いたいことだけを延々と話しているため、聴くのも上手ではないのだ。大量の言葉を発するが、相手に伝わらないのだから、コミュニケーションが上手とは言えない。

一つずつ具体的に見てみよう。

1.結論だけ言えばいいのに、過程(いきさつや背景など)を延々と話す

「結論」を求められているのに、「過程」を話す人は多い。これは、過去(第6回)でも述べたが、上司など他者からの質問に答える際に起こりがちな事象である。

上司:「成果物は予定通りに完成しそう?」

部下:「それがですね、今朝、お客様から別件の依頼が飛び込んできて、その調査をするのにとても時間がかかってしまい、購買部にも確認しないといけないことがあったものですから、購買部が理解しやすいように状況をまとめたりしていると夕方になりまして…」

上司:「いいから、結論を先に言って!成果物は予定通りに完成するのかしないのか?」

部下:「予定通りに進めたいのですが、割り込みの仕事が入ってくるので…」

こうやって、いつまでも結論を言わず、相手をイラつかせてしまうのだ。

2.沈黙に耐えられず、常に話し続ける

ある程度説明を受けた聴き手は、その内容を咀嚼するために沈黙の時間が必要だ。説明している側が「ご不明点ありますか?」などと聴き手に尋ね、聴き手もその点について、「うーん、そうですねぇ」と頭の中で考えているのに、その間の沈黙に耐えられなくなってしまう。だからすぐまた話し始めてしまう。

「あ、今、この場ですぐに何か質問は?言われても難しいですよね。後日メールでもいいですよ。以前、この事例を紹介した別の企業様ではこんな質問が出たことがありまして…」

この「間」のない弾丸トークが聴き手の理解を妨げている。聴き手には内容を咀嚼する「間(ま)」が必要なのだ。

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3.知っていることを全て話そうとする

顧客から「この報告書に書かれている“〇〇”とはどういう意味ですか?」と尋ねられた時、一言で、「〇〇とは、××することです」と答えれば済む。

ところが、「これ、もともとは△△という言い方をしていまして、なぜ△△と言っていたかというと、それは…(中略)…それが201X年ごろから、徐々に〇〇と呼ぶようになり、それが今では業界で定着したのですが、そんなわけで、最初と今では呼称が変わったのですが、〇〇というのは…」といったように、自分の知識を全て話そうとする人がいる。

枝葉の話も多く、質問されていることに答えないうえ、一つの説明の中に大量の情報が含まれていて、聴き手は結局「なんだったんだ?」とポイントがつかめない。結論を先に言い、質問されたときに、その他の情報を提供するほうがわかりやすい説明になる。

4.自分の思いも話し始める

どんな技術を使うか、その技術を使った場合のメリットデメリットを顧客が知りたいとする。「どういう技術でどう解決するか。そのメリットデメリットだけ」を話せば済むところを、その技術に対する自分の思い入れまで語り始めてしまう人もいる。

少しなら、熱意が伝わって好印象を与えることもあるのだが、その「思い」の部分が長すぎて、聴き手は、「そこまで話さなくていいよ」と思ってしまうことも多い。

例を挙げよう。「A案とB案、どちらのアプローチで解決するのがお奨めですか?」と顧客に聴かれたとする。

「A案です。A・B共に技術的には同じことができるのですが、A案のほうがトータルのコストが抑えられるからです」

「私は長年、〇〇業界のシステムに携わってきましたけれど、基本的にA案のやり方を推奨しています。この方法で進めると、とてもいい解決ができますし、技術的にもとても面白いのです。エンジニア魂が揺さぶられるというか。やっていて面白いのですよね。それに、今までご提案したどのお客さまも喜んでくださいました。私はそのお客様の喜ぶ顔が見たくてこの仕事をしているようなもので…」

本来なら一言で回答は終わるはずなのに、思いを語る人は語り始めてからが長い。あなたの思いなど、相手にとっては重要でない場合が多い。

5.同じ話を繰り返す

これまで説明したようなことが会話の中で繰り出されで、話はどんどん長くなっていく。そして、極めつけは、振り出しに戻るケースだ。「ですからね、さっきも言いましたけれども」などといって話が元に戻る。

「その話は、もう2回も3回も聴いたから」と聴き手はうんざりする。

話が長い人は、「相手が聴きたいこと」を話すのではなく、「自分が話したいこと」を話す傾向がある。相手のために話しているのではなく、自分のために話してしまう。自己満足なのだ。自分が話したいことを長時間話し続けて、本人はすっきりする。

これでは聴き手は、「話が長くて、結局、何が言いたいんだかわからない」と思うだろう。場合によっては、「それは、どうでもいいんだけど」とも考えていることもある。時間がかかるにも関わらず、コミュニケーションの目的を達成できていないことも多い。

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話が長くならないようにするためには、上記5点に陥らないように気をつけることだ。 つまり、「結論や主旨を先に述べ、相手に伝わらない場合に限り、思いやいきさつを説明し、沈黙は相手が考える間ととらえる。間は話すことで埋めようとせず、同じ話を2回以上繰り返さない」ということになる。

とはいえ、自覚できるなら話が長くなる心配はないわけで、一度、自分が話している様子を録画や録音して聴いてみることをお奨めする。自分がコミュニケーションしている様子をビデオやテープで聴いてみる機会はそうそうない。

映像や音声で見聞きすると、少しだけ客観視できるため、「うわ、だらだら話しているな」「これは、説明が長すぎるな」と自覚できることも多い。気の置けない同僚や友人がいるのなら、「話が長い」と指摘してもらうことも手である。

私は、プレゼンテーションをする機会が多いが、参加者や同僚から毎回フィードバックを受ける。「説明が冗長だった」「具体例が入っていてよかった」など良い点も、改善点も他者から指摘してもらうことであらためて自覚できることもある。

仕事の生産性が問われる時代である。会話の時間もコストである。物事は簡潔に話すように心がけたいものだ。

(編集後記)
いかがでしょうか。「なぜ話が長いと思われるのか」を知っておくと、対処法を考えたり、話の途中で自制したりできるはずですので、参考にしてください。
次回は、相手の話を深堀りする際の質問方法について、例を挙げながら説明します。どうぞお楽しみに。