派遣で働くエンジニアのスキルアップを応援するサイト

PRODUCED BY RECRUIT

【連載】第7回 田中淳子の「人と話すのが苦手だ」と思ったら読むコラム

第7回 話についていけなくなる前に相手に上手に質問するには?

今回は、人材教育コンサルタント/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント田中淳子さんの「対人力養成講座」第7回です。「今すぐできるけど、一生役立つ力」がつくための講義をお届けしますのでどうぞお見逃しなく。

過去の連載を見逃した方はこちらへ ↓

f:id:itstaffing:20160318180226j:plain

【講 師】
人材教育コンサルタント/産業カウンセラー/国家資格キャリアコンサルタント 田中淳子

コンピュータメーカー勤務を経て、1996年よりグローバルナレッジネットワークで、ITエンジニア向けヒューマンスキル研修プログラムを開発、実施。著書に『ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方』『現場で実践!若手を育てる47のテクニック』など多数。

■今回のポイント

質問するタイミングを逃してしまい、話についていけなくならないようにする予防策は
・事前に勉強して、自分がわかっているべき範囲を明確にする
・上手な質問の仕方、相手との理解の擦り合わせ方をマスターする
具体的にどんな擦り合わせ方があるかもご紹介しています。最後までご覧ください。

誰しもが経験したことのある「聴きそびれ」はなぜ起こるのか

ある30代のITエンジニアが悩みを打ち明けてくれた。

「聴くことが大事だということは本にも書いてあるし、研修でも習います。どうやって聴けばよいか、というスキルだって何度も学習しました。でも、それ以前に、“質問していいのか迷って聴けない”ということが時々あるんです。これってどうしたらいいんでしょう?」

「どういう時、質問していいのか迷うのか」を尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。

「たとえば、お客様と打ち合わせをしている時、知らない用語が出てくることがあるじゃないですか。この用語、今質問していいのか、それとも、その用語は知っていて当然だと思われるレベルかな、と迷うんです。『どういう意味ですか?』って訊いたら、『そんなことも知らないの?』と呆れられるんじゃないかとか考えてしまって。 そうやって迷っているうちに、つい『はい、ええ』と知ったかぶりして、頷いちゃうんですよね」

顧客が当然のように使う用語は、質問することに躊躇してしまうと言うのだ。

「他にも、お客様が物凄く楽しそうに調子よく話している時は、質問したいと思っても、話の腰を折るのは悪いかなと思って、ただ頷いて聴き続けるんですね。話のようやく途切れたと思った時点ではすでに相当話が進んでしまっていて、いまさら、『5分前のことなんですけど、質問してもいいですか?』なんて言うのも流れを無視しているようで、聴けないんです」

相手の調子を狂わせてはいけないから質問し損ねるというケースもあるようだ。

こういう気持ちはとてもよくわかる。1つ目の例は、自分のプライドが邪魔をしてしまうのだろうし、2つ目の例は、相手への気遣いから来るものだろう。

「どちらの場合も、質問せずに済ませてしまったその後はどうなるんですか?」

「調べればわかる用語だったら、後から調べて納得することもあります。ただ、調べてもわからない言葉もあるし、会話そのものがあいまいな理解のまま終わったものだから、後で電話やメールで質問し直したりすることもあります。こういうことだろうと自分なりの解釈で議事録や提案など作ると、『これ、違う』と指摘されることもありますし。良くないことはわかっているんです」

会話の場で聴かずに済ませてしまったとしても、結果的には、十分な理解が出来ていないことから相手に再度時間を取ってもらうことになるか、理解できた範囲で仕事を進めた場合は結局は相手にも自分にも満足の行く仕事ができないということになることもあるという。

「質問したほうがいいのだろうけれど、聴けない」こういう悩みを抱えるITエンジニアは多い。

f:id:itstaffing:20161219113347j:plain

「わかっているべき範囲」を明確にする

“質問していいのか迷って聴けない”問題をどう対処すればよいか、考えてみよう。

1つ目の、プライドが邪魔する、ということについてだが、「わからないのは恥ずかしいことでは?」と思うのは、「わかっているべき範囲」を自分が押さえている自信がないからではないか。

まずできることは、とにかく知らないことを減らす努力だろう。顧客と話す場合、事前に出来る限りの下調べや勉強をする。「これだけ業界や相手企業について予習しておいたのだから、それでもわからないことがあってもそれは質問したからといって恥ずかしくはない」と思えれば堂々と質問することができる。

予習せずに、丸腰で顧客の前に出てしまうから、「あ、この言葉は知っているべきなのかな」と焦ってしまうのだ。

前後の会話が顧客と十分かみ合っていれば、「恐れ入りますが、●●という言葉を初めて聴いたので、教えていただけますか?」「不勉強で申し訳ないのですが、●●という言葉は、どういう意味でしょうか?」 と質問したからといって相手も不快には思わないだろう。

仮に「え、ご存じないですか?」と言われたところで、それは一瞬のことだ。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥、という。わからないまま話を進めて、その日の会話全体がつかめなくなることと比較したら、どうということはない。

そもそも、話している方も自分が専門用語やマニアックな業界用語を使っていることに気づいていないことも多々ある。質問したら、「あ、ごめんなさいね。これ、社内用語でした。わからないに決まってますよね」といって苦笑いされることも往々にしてある。

f:id:itstaffing:20161219113351j:plain

相手との理解の擦り合わせには紙に書いてみるのがおすすめ

では、2つ目の、相手の話の流れの妨げになるのではないかと気遣ってしまうケースはどうか。

「正確に議事録を起したいので、念のため、確認させてください」
「恐れ入ります、大事な部分にメモが追い付かないので、一旦書き留めさせてください」
「理解があっているか確認したいのですが」
これは私が打ち合わせの際によく口にする言葉だ。

そして、私はよく紙を使う。白紙を1枚取り出して、相手の話を整理する目的で、絵でポイントを書いてみる。その紙を相手側にぐるっと向けると、相手も「なんだ?」と言う風に紙に目をくれ、一瞬言葉は途切れる。

そこですかさず、「ここまで整理してよいですか?」と切り出し、「おおざっぱな絵で申し訳ないんですが、ポイントをまとめると、これがこうなって、こちらがああなって…」と絵を示しながら自分の言葉で復唱し、「…という理解で合っています?」と確認するのだ。

経験から言うと、こうやって確認することで怒り出す人はいない。それより、「あ、そうです、そうです」とおっしゃるか、「えっと、ちょっと違いますね。これに書き足していいですか?」などと言い、私のつたない絵に書き足してくれることのほうが多い。

大切なのは、互いの認識を合わせることである。

自分のプライドは、よい仕事をするために発揮することとし、余計な気遣いをし過ぎることなく、その場その場で相手の話は最大限理解すべく努力する。だから、下手な遠慮は無用なのだ。

(編集後記)
今回の内容は、読みながら、「そうそう、質問できないんだよな…」と思われた方が多かったのではないでしょうか。田中さんがおすすめされる紙に書く方法は、私も箇条書きで行っていますが、絵で書くと、相手が見たときに瞬時に理解でき時間を取らせないのでよいですね。
次回は話が長い人に関して解説します。お楽しみに。