第1回 スキルを磨くための情報をキャッチしよう!
コンピューターで提供されるソフトウェアやサービスは日々進歩しています。それに伴い、ソフトウェア開発に必要な知識や技術も広範囲に渡り、複雑さ・難易度も増しています。
そんな日進月歩の環境の中で、ソフトウェアエンジニアとしてキャリアを積んでいくには、スキルを磨いていく必要がありますが、肝心の磨き方を学ぶ機会が多くないのではないでしょうか。
そこで、以前ITSTAFFINGで開催したイベントが好評だった塩谷啓さんに、エンジニアのみなさんがこの先エンジニアとして生きのこり、キャリアを深めていくために不可欠な、「スキルを磨く」ための取り組みについてお話いただきます。月に一度、お届けしますので、どうぞお楽しみに。
好評だった塩谷さんの「エンジニアとして生きのこるためのスキルをキャッチアップする技術を学べるセミナー」はこちら↓
【講 師】
塩谷 啓(しおや ひろむ)さん
株式会社ドワンゴ所属、エンジニア兼採用担当、運営母体のひとつであるドワンゴのネット高校の一年生。中途採用する側・される側の両面から、エンジニアとしての生存戦略について考えている。 共著「Web制作者のためのGitHubの教科書」(インプレス)
私は現在40代前半、これまでゲームプログラマーからWeb開発に転向し、ソフトウェアエンジニアとして数社を渡り歩いてきました。現在はマネージャーとして30人ほどのチームをまとめつつ、Ruby on Railsを使った開発や、エンジニアの採用・育成・評価に関わっています。
計算機科学やプログラミングを系統立てて学んだわけではありませんが、自力でスキルを身につけてここまでやってくることができました。そのため、「スキルを磨く」については実体験に基づいたお話ができるのではないかと思います。
効率よく情報収集する
さて、最初のテーマは「情報収集」についてです。
スキルを磨くと言っても、やみくもに勉強していてはいくら時間があっても足りません。自分が取り組んでいる問題を解決するために必要なスキルや、この先需要が高まりそうなスキルを効率よく身につけるために、情報収集は欠かせません。
合理的にスキルを磨くために、効率的な情報収集の手段を身につけましょう。
情報ソースの特徴を理解する
ソフトウェア開発についての情報や知識は、技術の進化が早いためすぐ陳腐化してしまう傾向があります。一方ですでに広く浸透していて、普遍的に使えるスキルも多くあります。情報を収集するときは、その情報の鮮度や需要についても考えるとよいでしょう。
具体的には、その情報が「編集されているか」に着目します。媒体に分けて見てみましょう。
書籍や雑誌、独自の技術記事を掲載するWebサイトなどは「編集されている」情報源です。速報性には欠けますが、内容については精査されていることが多く、間違いも比較的少ない傾向にあります(すべて正確な情報というわけではありません)。
個人のBlogやSNSへの投稿は「編集されていない」情報源です。公開されるまでの時間が短いため速報性がありますが、情報の質は書き手に依存します。
今回は「編集されている」情報源についてご紹介します。
●書籍
情報収集の手段としても、スキルを磨く手段としても、技術書を読むのは一般的な方法です。書籍という情報源には、編集されているため正確さが期待できるという特徴があります。
一方で、執筆 → 編集 → 出版という長いプロセスを踏むことや外国語で書かれている場合は翻訳の時間が必要など、リードタイムがかかります。また、ニーズの多い技術分野ほど書籍が出版されやすいなど分野ごとに差があります。
そのため、技術書はすでに利用実績のある技術や知識を学ぶのにより適している、と言えるでしょう。もちろん新しい情報を得るために本を読むことも大事ですが、それで「最新情報を追っている」と思うのは危険かもしれません。
また、技術書(特に初心者向けの入門書)は手軽に出版できるため、技術書に強みがあるわけではない出版社からもどんどん出てきます。技術書を多数出版している出版社を知ることも重要です。私が信頼している出版社をいくつかご紹介します。
・オライリー・ジャパン
・オーム社
・翔泳社
・技術評論社
・インプレス
これらの会社の新刊リストを眺めていると、今ニーズが高い技術的トピックが見えてくる、という使い方もあります。
●雑誌
雑誌は書籍よりリードタイムが短い情報源です。最近は電子書籍とインターネットに押されて紙の雑誌は売り上げを落としているようですが、そんな中でも引き続き出版している技術系雑誌は、情報源として貴重です。ソフトウェア開発に関連する雑誌には、以下のようなものがあります。
・Web + DB Press
・Software Design
●IT系Webサイト
雑誌よりもう一段リードタイムが短いのが、ソフトウェア開発者向けの情報を掲載したIT系Webサイトです。出版社やベンダーなどが運営していることが多く、メディアの目的もさまざまです。共通した特徴としては、注目されているトピックをセレクトして紹介していて、速報性も高めです。私筆者が定期的にチェックしているサイトをいくつかご紹介します。
・CodeZine
・IBM developerWorks 日本語版
・POSTD
RSSやメールマガジンなどを提供していることも多いので、それらを購読すると更新情報を簡単に手に入れることができます。
簡単ワーク 各特徴を理解した上で情報を集めてみましょう
みなさんが普段使っている技術要素について調べてみましょう。
●書籍を探す
普段使っている技術の中で、一番重要なものについて書かれた 書籍を探してみましょう
-それはいつ出版されたものですか?
-その出版社は他にどんな技術書を出していますか?
●雑誌を探す
Webサイトや書店で試し読みしてみましょう
●Webサイトを探す
例に挙げた以外のサイトも探してみましょう
RSS・メールマガジン・Twitterアカウントなどを探して購読してみましょう
(編集後記)
今回は「編集されている」情報源について具体的にご紹介しましたが、今までどの程度活用しておられたでしょうか。このように情報ソースを分けると、ただやみくもに情報を集めるのではなく、用途に応じて使い分ける必要があることがよくわかります。
次回は「編集されていない」情報源の種類と接し方についてお話しします。
お見逃しなく。