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【イベントレポート】ドワンゴ塩谷啓氏から学ぶ、エンジニアとして生きのこるスキルをキャッチアップする技術

スキルアップはしたいけど、その方法がわからない、どのようにスキルアップをすれば市場価値もアップするか知りたい。そんな悩みを持つエンジニアを対象に、「エンジニアとして生きのこるためのスキルをキャッチアップする技術を学べるセミナー」が4月25日に開催された。

講師は株式会社ドワンゴの塩谷啓氏。現場でコードも書きながら、マネージャーも務め、さらに同社の採用も担当している。運営母体のひとつであるドワンゴのネット高校に今年エンジニアとして入学し、仕事の傍ら現在在学し勉強しているなど、異色のキャリアを持つエンジニアだ。

f:id:pinq4387:20160612031223j:plain株式会社ドワンゴ 塩谷啓氏
エンジニア兼採用担当、運営母体のひとつであるドワンゴのネット高校の一年生。中途採用する側・される側の両面から、エンジニアとしての生存戦略について考えている。共著「Web制作者のためのGitHubの教科書」(インプレス)

会場は青山にある株式会社マイネット様のオフィスをお借りし、美味しいお弁当も用意。和気あいあいとした雰囲気の中、セミナーも大変盛り上がった。今回のレポートではその様子をダイジェストでお届けする。

エンジニアとして生きのこるためのスキルはどう磨く?

今回のセミナーテーマである「エンジニアとして生きのこるためのスキル」。塩谷氏は、エンジニアとして生きのこるというのはどういうことか、その定義として以下の二つを挙げた。

1.職(≒ 収入)を途絶えさせないこと
2.意に染まぬ仕事を長く続けないこと

エンジニアとして生きのこり、バリューを出すために必要なことは、「コミュニケーション力を上げる」「スキルを磨く」。この二つしかないと塩谷氏は言いきる。

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コミュニケーション力を上げるというと難しく思われがちだが、訓練で習得することは可能だ。塩谷氏も、以前はコミュニケーション力が高いわけではなかったという。

「採用面接や講演などの経験を積むことで、次第に人前で話すスキルを身に付けてきました。訓練によってコミュニケーション力を上げることは可能です」

さらにリクルートスタッフィングの対人力アップイベントで登壇されている田中淳子さん著書の「ITエンジニアとして生き残るための対人力の高め方」(日経BP社)も紹介された。

スキルを磨くために必要な「地力」「アンテナ」「プレゼンス」

続いては、本編のテーマでもある「スキルを磨く」について。塩谷氏はIT技術が好きだったため、新しい技術の知識やトレンドを掴むといったことは、呼吸をするのと同じように自然にやってきた。しかし、今回のセミナーのために、「スキルを磨く」には何が必要なのか、改めて言語化をしてみたと語る。

塩谷氏が、スキルを磨くために必要なこととして挙げたのは、「地力」「アンテナ」「プレゼンス」の3つだ。

「地力とは、エンジニアとしてなくてはならない知識や経験、能力。もちろんプログラミングなどのセンスがあるに越したことはありませんが、努力と訓練で習得できるものだと思います」

最近は技術の進化やリッチなインターフェイスの普及などにより、ソフトウェア開発は年々複雑で難易度が増している。エンジニアもさまざまな技術領域の専門知識やスキル、経験が求められるようになってきた。
「エンジニアが一人でサービスを開発するのは難しいケースも増えており、他領域のプロフェッショナルと仕事をすることも多くなっています。専門領域以外の知識をすべて身に付けることは困難ですが、一緒に仕事をする上で、会話が成立する最低限の知識は必要とされます」

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技術動向やトレンドをキャッチアップできるアンテナを持つ

二つ目に挙げられたのは、エンジニアリング界隈の動向やトレンドをキャッチアップする「アンテナ」だ。新しい技術やサービス、市場ニーズが高いトピックを知っているか、問題解決の引き出しとしてメンテナンスできているか。それらは、自身のスキルを磨く上で必要不可欠だと塩谷氏は語る。

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三つ目の「プレゼンス」とは、エンジニアとしての存在感、実力を示す指標だ。日常的に「地力」「アンテナ」を磨く習慣はあるか、スキルシート以外のもので自分の実力をアピールできるか、といったことは常に意識してアウトプットしていくべきだとアドバイスした。

自分の技術力を伝える力を身に付けよう

続いて、参加者に自身の強みや課題を見つけてもらうべく、簡単なワークショップが行われた。塩谷氏が独自に開発したエンジニアMAPに、手書きで自分が携わっているサービスが該当する位置に、「一番大事な技術的要素」「最近注目のトピック」「自分の強み」を記入していく。

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横軸がB2B(ビジネス向け)かB2C(カスタマー向け)、縦軸は受託開発か自社サービスとなっており、塩谷氏も自身の例を示して解説を行った。

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▲塩谷氏の例として挙げられた記入例。Ruby on Rails、Microservices、さまざまな規模を経験

ワークが終わった人から、お弁当タイム。楽しそうに食事をしながら、会場に置かれたホワイトボードに自分の位置を記入し合い、交流を行う人も多数見られた。

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技術書を読むだけではダメ。手を動かして「地力」をつける

後半は、スキルを磨くために必要な「地力」「アンテナ」「プレゼンス」について、さらに詳しく解説された。前半でも語られたように、ソフトウェア開発は年々高度化・複雑化している。仕事でだけエンジニアリングに取り組めば十分だと思っていては、生きのこるのは厳しいと塩谷氏は指摘。技術書を読む程度はあたりまえで、実際に手を動かすことが「地力」につながると語った。

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「開発の現場は本に書かれたとおりには進みません。プロジェクトのリソースや速度などを判断してトレードオフすることもあるし、どういうときにどういう技術を使うかを日々考えながら取り組む必要もある。本やネットに書かれた記事を読むことも大事ですが、自分で書いたコードをオープンソースで発信していくこともスキルアップにつながります」

さらに、「今日の習慣が明日を作る、よい技術者を目指すためにも手を動かし続けてほしい」とメッセージを送った。

自分のための情報チャンネルをつくる

IT業界は技術の進化が早く、最新技術すべてを追いかけることはなかなか難しい。とはいえ、仕事で相談されたり、頼まれたりしたときにプロとして「知りません」「できません」というのは恥ずかしいもの。この人にはお願いできないと思われて仕事がこなくなることもあるだろうし、自分の可能性を狭めることになる。

塩谷氏は常に自分の中にインデックスを作るための情報チャンネルを持つようにしているという。知識や経験がない技術でも、すぐには断らず、まずは「できます」と答え、それから調べたり勉強したりしているのだそうだ。

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「常に自分の中にインデックスを作るための情報チャンネルを持っておけば、全く何のことかわからない状況は避けられます。もちろん全てを追いかけるのではなく、技術のエキスパートといわれる人が発信するTwitterや、はてなブックマークをチェックしたりしています」

塩谷氏のおすすめは、宮川達彦さんのPodcast『Rebuild.fm』(リビルドエフエム)。伊藤直也さんや及川卓也さんなどの著名エンジニアをゲストに呼んで技術の話をするものだ。最近話題の話を面白おかしく話してくれるので、楽しくトレンドが掴めるという。

日々のアウトプットが地力を磨き、プレセンスを増す

これまではインプットの話だったが、続いてはアウトプットの話。「プレゼンス」を上げるためには、能力をアピールできるアウトプットを行い、可視化できる状態にすることが大事だと語る。

「可視化できないものは存在しないのと同じ。可視化できる状態にすることでやっとエンジニアとしての土俵に上がれるし、プレセンスを増すことができます。例えば、技術ブログやGitHub、Qiitaに投稿することでの発信、勉強会などで発表したスライドの公開などです。ドワンゴが提供している『ニコナレ』は、プレゼンテーションのスライドだけでなく、音声も録音できるので便利です(笑)」

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発信することは地力をつけるだけでなく、社会的な評価を得たり、技術者同士のコミュニケーションを深めたりなどのメリットも多い。可視化することで、自分のスキルや知識、経験を言語化することにもつながる。

続いては、ワークショップ。参加者に自身の「現在の取り組み」と「新しい取り組み」を箇条書きで書き出してもらった。

「問題点があった人は新しい取り組みをやってみてほしい。些細なことからでも構いません。ポイントはいつまでにやるとスケジュールを決めてやること。一番足りなさそうなところから、始めてほしい」と塩谷氏は語り、セミナーは終了した。

セミナーの参加者からは、「アウトプットの必要性がとても大事だと感じた。また、例を挙げて話していただけたので分かりやすかった」「現役のエンジニアの生の声が聞けた。現役の人材採用をしている方の意見が聞けたので参考になった」といった塩谷氏の講義に対する共感や、今日の内容を参考にしたいという感想が多く寄せられた。

(執筆:馬場美由紀 撮影:延原優樹)