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働きたいのに「不」の障壁を持つ人をなくしたい──ITスタッフィングは、なぜエンジニアのキャリア支援に注力するのか?

 IT業界、特にエンジニア領域においては慢性的な人材不足により、需給バランスが完全に崩れています。

求人サイトだけではなく、技術勉強会やイベントでもエンジニアの争奪戦が繰り広げられています。一方、好きな技術でやりたい仕事に就き、労務環境や報酬、プライベートと仕事の充実したワークバランスなどを確立しているエンジニアは、まだまだ数少ないのではないでしょうか。

 

今回はエンジニアを取り巻く環境変化から、ITスタッフィングが考える「エンジニアのキャリア支援施策」や「新しい働き方の提案」を、2015年に新設されたエンジニアコミュニケーションを考える部署であるエンジニアリレーション推進部部長の石川よりお伝えしたいと思います。

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▲リクルートスタッフィング エンジニアリレーション推進部部長 石川景太
※エンジニアリレーションとは、2015年に新しくできたエンジニアコミュニケーションを考える部署を指す

WEB系開発中心に、派遣エンジニアのニーズが急増

エンジニアの仕事全般に言えることですが、直近でも、首都圏でご依頼いただく約2000案件のうち、人材をご紹介できているのは半数以下にとどまっている状況です。

 

特に人材ニーズが高いのはWEB系開発案件ですね。今流行りのFintechをはじめ、盛り上がっている業界や旬のプロジェクトはもちろんのこと、大手SIerやベンチャー企業まで、幅広い案件があります。今ならエンジニアがやりたい仕事を自由に選べる状況です。今後景況によって変動する可能性もありますが、しばらくはこの状況が続くのではないでしょうか。

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各年1月の首都圏IT系職種の案件数[リクルートスタッフィング調べ]

 

このような需給バランスに関わらず、ITスタッフィングでは、毎月、200名を超えるエンジニアの方がご登録に来てくださっています。最近の傾向としては、ずっとコードを書いていたいのに、マネジメント職や営業への異動を打診されたといった悩みを抱える方の登録が増えてきたことが、まず一つ挙げられます。

これまでのスキルを活かしつつ、最新技術も極める

いまどきの最新言語でコードを書きたいのに、レガシーな言語しか使えない…といった方も多いですね。COBOLしかやったことがないけど、新しい言語での開発経験を積むために、あえて派遣という働き方でスキルアップを目指す方もいます。派遣という就業スタイルであれば、好きな言語や好きなワークスタイル・工程を選んで働くことができます。実際、言語を指定して仕事を選んでいる方がほとんどです。

 

開発以外にも求人内容は幅広く、開発ソースコードのチェックなどのオペーレータ的な仕事はもちろんのこと、大規模・小規模問わずプロジェクトマネージャー(PM)をしている方もいれば、専門言語の超プロフェッショナルなギークもいらっしゃいます。

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意欲次第で、実務未経験でもスキルアップできる場合も

逆に未経験でも、自分で勉強しているという事実があれば「実務を通して教える」というスタンスの企業も少なくありません。エンジニア領域は自分で勉強することも可能なので、実務経験がなくても意欲を買われることが多いですね。

ひと昔前だったら、Java3年以上、PHP2年などの実務経験が求められていたのが、何かしら開発やマネジメント経験があれば、アサインされる可能性がある状況です。よく転職回数が多いと不利と言われますが、派遣の場合はむしろ他社で経験を積んでいる分、いろんなケースの事例・経験があるからと、ネガティブに受け取られることはほとんどありません。

強みを活かしたキャリアチェンジのチャンス

プロジェクト単位でしっかり成果を出してくれるプロフェッショナルを優先してアサインする企業がほとんどなので、強みを活かしたキャリアチェンジも自由にできます。意外だと思われる方もいるかもしれませんが、プロジェクトマネージャー(PM)の仕事もプロジェクトの大小に関わらず、多くあります。大きなプロジェクトでPMをやっている方だと、時給3000~4000円程度で働いているエンジニアもいます。

優秀なエンジニアがあえて派遣で働く理由は?

そうした優秀なエンジニアがあえて派遣で働く理由はなにかというと、「いろんな会社で新しい技術を学びたい」という人もいれば、「人を成長させるマネジメントより、プロダクトを成長させるマネジメントをやりたい」、「ずっと現場で仕事をしたい」、「優秀な人がたくさんいるのも刺激になるが、自分がいないと回らないというプロジェクトに携わりたい」という人もいる。理由はさまざまですね。

社員採用であれば、実務経験や企画力・マネジメント力なども求められることが多いのですが、派遣は必ずしもマルチエンジニアである必要はありません。現状、派遣エンジニアに求める企業のオファー基準はかなり幅広くなっているので、自身が望む業務スタイルや専門スキルで仕事を探すことが可能なのです。

PHP経験1年の60歳スタッフがアサインされた事例も

ITスタッフィングでは、エンジニアとして働きたいのに「不」の障壁を抱える人たちのバックアップも行っています。その一つが「世代」です。クライアント企業にも、世代を広げるだけで優秀な人材が確保できることが認知されつつあります。例えば、メンターが不足するベンチャーなどは、ベテランエンジニアが参画することで、若手を育ててくれる等、大きなメリットに繋がることが多いのではないでしょうか。

さらにはプロフェッショナルな人だけではなく、未経験者や、COBOLエンジニアなど最近の言語については実務経験のない人でも、自身で勉強し、知識を蓄えた方がアサインされるケースも増えてきました。最近では、PHP経験1年のシニアの方が、アサインされた事例もあります。

子育てしながら開発の仕事ができる環境を作りたい

勤務時間が短くてもいいという企業も増えています。ITスタッフィングでは、フルタイムでは働けないママエンジニアたちの紹介も積極的に行っていきたいと考えています。

これまで、本当は開発の仕事がしたいのに、子育てしながらでは無理だとあきらめて、開発の仕事以外で働くママたちが、少なくありませんでした。でも、それってすごくもったいないですよね。育児が落ち着いたら考えるというケースが多いのですが、仕事はたくさんあるし、能力が高い方もいる。

ママたちが働くにあたって制約条件がある場合は、それに合わせたお仕事をクライアントと共にさらに創っていきたいと思っています。時短や週3日勤務など、フルタイムではない働き方でコードを書くことができる案件が増えれば、キャリアをあきらめる必要がまったくないんですね。

企業も、スキルが高いけど時短という制約のあるママエンジニアの活用にメリットを感じはじめています。時短エンジニアを使うイメージがない企業にも、ITスタッフィングが介在することで、その制約と思われる観点を除き、実力値やメリットをきちんと伝えていきたいと思います。

エンジニアのスキルと実力を可視化するキャリア支援開始

さらにITスタッフィングでは、就業中の派遣エンジニアに、エンジニアの実務力をスコア化するリクルートキャリアのサービス「CODE.SCORE」の試験を受けてもらうことで、企業に個人が持つスキルを正当に評価してもらうという試みもはじめました。登録者の中には、高いスキルを持っているのに実務経験はない方や、自分の実力に気づいていない方も多くいらっしゃいます。

 

実際に仕事ではテクニカルサポート職についていて、開発経験はないけど、趣味でアプリを作っている方に受けてみてもらったところ、平均より高い点数が出るというケースがありました。その方は、Androidアプリの開発をやりたいけれど、Android開発実務経験がなく、なかなか弊社からご紹介が難しかったのですが、この試験の点数をもとに開発職へ職種転換して、開発エンジニアとしてのキャリアをスタートさせたケースもあります。

 

一度、実務経験を積めば、次から時給が上がる可能性もあるし、仕事も見つけやすくなるので、今後はもっと活躍できると思います。そのためにも、実務経験を積みたい人への技術支援や、どこを伸ばせばいいのかをスキルの可視化プログラムで示してあげるサポートをしていきたいと思います。さらに、新しい技術を学べる勉強会の開催や、オンラインでできるキャリア支援のコンテンツも準備中です。

 ▼第一弾を開催いたしました。引き続き開催を予定しております。

www.itstaffing.jp

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エンジニアの「不」の障壁をなくすキャリア支援

ITスタッフィングは、フリーランスや正社員にはできない派遣ならではの新しい働き方、さまざまなワークスタイル、そしてエンジニアのキャリア支援をしっかりやっていきたいと考えています。

前述したママエンジニアやプロフェッショナルとして自分の得意分野の仕事を極めたい人、未経験者からスキルアップしたい方たちが、エンジニアとしてのキャリアデザインをしっかり作っていけるようなプラットフォーム作りを目指しています。

 

人材の需給のバランスが崩れ、雇用の流動化が進む今だからこそ、これまでの常識に縛られないエンジニアの働き方を多様化させるチャンス。今後も皆さんと共にエンジニアのワークスタイルを変革し、キャリアデザインを築くサポートやコンテンツの発信を続けていきますので、是非ご期待ください。

文=馬場 美由紀  写真=刑部 友康

「ライフワーク」と「ライスワーク」の両立: 藝大卒イラストレーターが選んだ“都合のいい”働き方とは?

好きなことや使命の達成など、人生を通じてやり遂げたいと思う仕事を「ライフワーク」と呼ぶ。それに対して「食べていく」ために携わる仕事のことを「ライスワーク」と呼ぶことがある。生活の糧である米を意味するライスをライフと対比させた言葉遊びだ。

好きなことで一生食べていく、すなわち、ライフワーク=ライスワークにできれば理想的だが、これはなかなか難しい。

今回お話を伺った渡邊はるかさんは、自分探しの末に見つけたライフワークを、ライスワークと両立させながら、段階的にメインの仕事にシフトさせようと頑張っているイラストレーターだ。彼女が選んだ夢の実現への道のりを紹介しよう。

自分の人生に、美術は必要か?

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渡邊さんは、東京藝術大学のデザイン科出身。同科の卒業生の多くは、大手広告代理店や建築、インテリアデザインの企業に就職し、デザインの仕事に携わるという。渡邊さんも、順当ならばそうしたキャリアを築いていくはずだった。

学生時代に友人たちとよく交わしていたのが「無人島に行っても絵を描くか」という問い掛けだった。誰にも見てもらえないと分かっていても、果たして創作活動をするのかという、やや哲学的なテーマだ。

「『無人島でも絵を描く』と答える人が、格好いいとされていました。でも、自分はきっと描かないのではないかと感じていました」

渡邊さんは「自分の人生に、美術は必要か?」という根源的な問いの答えを見つけようと、自分探しを始めた。

「海外旅行に行ってみたり、舞台芸術を勉強してみたり、音楽科の学生たちとコラボレーションしてみたりして、情熱を傾けられるものを探そうとしました」

しかしなかなか「コレ!」というものは見つからず、渡邊さんは大学院に進む道を選ぼうとしていた。

しかし、大学院に進むこともやめてしまう。大学3年時に東日本大震災が起き、長期でボランティアに参加する中で、大学院に行ってもモラトリアムな期間を延長するだけではないのか、と考えたからだった。

やっと見つけた「自分」がやりたいこと

大学院に進まず、就職することもなく大学を卒業した渡邊さんは、アルバイトを三つ掛け持ちし、自分探しを続けた。

一つ目は中華レストランのホールスタッフ、二つ目はCM制作会社の受付、そして三つ目はイラストレーターの制作アシスタントだった。

「イラストの世界では、いまだに師匠の技を見て盗むといった職人的な部分が残っていて、どうしても憧れのイラストレーターの仕事を間近で見て学びたいと思っていました。ところが、その方は藝大とは別の美大の学部卒の人しか雇わないと聞いたので、知人のツテを頼ってあるゼミに聴講生として参加させてもらい、そのイラストレーターの事務所でも働けることになりました」

このイラストレーターアシスタントのアルバイトが良い刺激となり、大学で専攻したデザインよりも、イラストを描くことに対して創作意欲をかき立てられることが分かった渡邊さんは、あらためて名門美術学校に通い、さらに勉強したりコネクションを作ったりする方向に軸を移した。数年間の自分探しに決着が付いたのだ。

しかし渡邊さんは、この時期に開催された大学の同窓会には出席しなかった。アルバイト生活の身にコンプレックスを感じて、大手企業に就職した仲間たちに会いに行く気持ちにはなれなかったからだという。

デジタルイラストレーションを学び、仕事に

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イラスト制作に焦点を定めた渡邊さんは、デジタルイラストレーションで広告やゲームキャラクターなどを手掛ける制作会社に就職し、週5日フルタイムで働くようになった。雇用形態は契約社員だった。

配属されたのはデジタルイラストレーションを基礎から学べる部署で、上司にも恵まれた。

「この職場で、この先も食べていけると確信できるスキルを身に付けられました。仕事を教えてくれた上司には、今でもとても感謝しています」と、渡邊さんは振り返る。

しかし良いことばかりではなかった。仕事は時間的にハードで、残業は当たり前、休日も課題の制作などで、自由になる時間はほとんどなかった。その状況を事前にある程度は分かっていたので、美術学校も入社前に休学の手続きをした。

さらに手の痺れや目まいなど、体に不調が出たため、「このままで仕事を続けていくのは難しい。何より好きな創作活動ができなくなるのではないか」と怖くなり、在籍1年半ほどで最初の職場を退職することにした。

「美術学校の休学可能期間の上限が近づいていたことも退職理由の一つです」とも付け加えてくれた。

“都合のいい”条件にマッチする仕事があった!

制作会社を退職するに当たって、渡邊さんは次の仕事を探した。

以前と同じような働き方では美術学校への復学や創作活動に支障が出ると考えた彼女が選んだのは、登録型の派遣だった。派遣の働き方は、退職前に前職の同僚に教えてもらったという。

「それまでは、こんな働き方があることを知りませんでした。前職の制作会社にはリクルートスタッフィングの派遣スタッフが多かったので、私もまずはリクルートスタッフィングに登録してみることにしました」

美術学校への復学を第一に考えていた渡邊さんは、「デジタルイラストレーションのスキルを生かせる仕事」で、なおかつ「残業なし」「時短もOK」という“都合のいい”条件を出した。

リクルートスタッフィングから紹介されたのは、モバイルSNSやソーシャルゲームを展開する大手企業での、ゲームキャラクターデザインの仕事だった。条件を全てクリアしている上に、時給も前職以上に高くて驚いたという。

「派遣先は従業員のコンディションを第一に考える社風で、少しでも体調が悪いと、上司が『休め』と言ってくれます。仕事中の休憩も好きなタイミングで取れるし、正直、環境が良すぎる! と思います(笑)」

時間に余裕ができたため、美術学校に復学し、さらにトレーニングジムにも通い始めた。自分の作品を描く創作活動にも、より多くの時間を使えるようになった。本当に好きなことをトコトン追い求めるために、派遣という働き方を有効に活用しているのである。

渡邊さんにとって、同じイラスト制作でも、オリジナルの創作活動は「ライフワーク」、オーダーに応えてゲームキャラクターをデザインする仕事は「ライスワーク」という位置付けだ。

派遣で働くようになって3~4カ月が過ぎたころ、再び大学の同窓会があり、思い切って出席してみたという渡邊さん。すると、好きなことを仕事にしようと夢を追いかけている彼女のことを、うらやましがる人もいた。

「大手企業では先輩や上司のサポート業が大半で、自分のクリエイティビティを発揮する機会が少ない、仕事に追われてプライベートもままならない、という声がありました。そんな人は、激務で体を壊してしまうぐらいなら、ちょっと休憩のつもりで派遣という働き方を経験してみるのもいいのでは、と思います」

初の個展開催。さらなる目標も見え始める

渡邊さんは2016年2月に、初の個展「人魚は実在するのか?展」を開催した。イラスト作品を飾るだけではなく、会場の壁にもイラストを描き、会場全体を渡邊さんの作品で埋め尽くす、という趣向を凝らしたものだ。

個展を開催したことで、渡邊さんには新たな目標が見え始めた。大好きな創作活動で、生活の糧を得られるようにしていくこと。すなわち、フリーランスのイラストレーターになることだ。

渡邊さんは現在は週5日勤務だが、どこかのタイミングで週4日勤務に変えていきたいと考えている。そして、平日1日を創作活動や営業活動に割り当てたいという考えだ。

そうした働き方が可能なのも、派遣ならではの魅力と言える。派遣という働き方を活用すれば、ライフワークとライスワークを明確に分けることもできるし、渡邊さんのように、段階的に軸足の比重を変えていくこともできるのだ。

好きなことを仕事にして生きていくのは誰もが夢見るところ。しかし、実現するのが難しいからと、チャレンジする前からあきらめてはいないだろうか。

夢の実現のためにはいろいろなアプローチがある。派遣という働き方もその一つであることを、渡邊さんが教えてくれた。

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